【ウマ娘】トレーナー「なんかループしてね?」ターボ「3スレ目だ!」【安価】
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138: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/09/23(木) 15:33:12.40 ID:snrHRKre0

 肩で風を切り、景色を置き去りにする。

 落葉を巻き上げる土砂で叩き落し、地に這う根は大きくストライドで乗り越える。

 景色は色褪せ、音は失せる。

 限りなく意識を尖らせて、思考と身体制御をリンクする。

 ただひたすらに、相手に勝つために。

 
(掴めたぜ、これが――これが、アタシの景色!)


 湿る土砂を強く踏みしめて、加速。

 肩で切る風の強まりを感じたら態勢を変え、自身の理想へ近づける。

 本来であれば数か月を掛けて理想化されるそれを、キンイロリョテイは”皇帝”との戦いで急激に進化させていた。

 彼女の持ち味――鬼神の如き膂力を余すことなく使い、無双の壁をも打ち壊す、限界スレスレのストライド。

 飛び跳ねるように駆ける彼女のそれは、さながら獲物を捉えた猛禽の如く、シンボリルドルフの背中へと迫っていた。


「来たか……!」
「漸く笑顔が無くなったな、皇帝サンよォ……ッ!」


 余裕がない訳ではない。余裕とは常に持つべきもので、なくすものではない。

 だが、笑顔を浮かべるリソースを割く余裕は、こと此処に至ってシンボリルドルフにはなくなっていた。

 凶悪なまでの笑みを浮かべるキンイロリョテイ。

 思わず振り向いた先に移る彼女の走りに、背筋に走る恐怖めいた感情を覚えたシンボリルドルフは、しかし怖気づくことなく、さらなる加速を試みる。

 浅かった踏み込みを強くし、腕の振りをより強くする。体を前へ押し出せば、彼女の体はいとも簡単に、矢の如く風を切る。

 雑草を踏み鳴らし、石を蹴り砕き。

 彼女たちは、遂に最後のポイントを発見する。

 傾斜25度の坂。100m進めば25mの高低差が発生するほどの急傾斜。

 今までは総合力が問われてきた。スピードにスタミナ、根性に賢さ。だが、ことここに至って問われるのは――。


「パワー勝負だな、キンイロリョテイ……ッ!」
「受けて立つぜ、シンボリルドルフッ!」


 両者ともに長所とする、パワー。

 実質的に、ここでキンイロリョテイが勝利することが出来れば勝利である。

 まさに、天下分け目の天王山。両者ともに負けられない戦い。

 負けられない。勝ちたい。強大すぎるが故、呼吸にすら現れそうな感情を強く吐き出すように、両者は強く地面を踏みしめる!


「はあああぁぁぁッ……!」
「うおおぉぉお……らあぁぁぁぁぁッ!!」


 踏み込みごとに土が抉れ。

 その声ごとに木が揺れ。

 蹴り上げごとに地が震える。

 重力が中心に集約するように、彼女たちの総力はポイントに注がれ、それ以外は何も見えなくなる。

 相手も、自分も。空気も匂いも何もかも。

 ただ、誰よりも――光よりも速く駆けるウマの本能がそこにあるだけ。

 本能と本能の鬩ぎ合いを、誰もが見守った。

 甚大に立ち込める土煙の中、誰かがパンチを切る音が聞こえて、会場は静寂に包まれる。

 やがて土煙が晴れて、その先に見えた影は――。


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