30:名無しNIPPER
2021/09/04(土) 18:35:30.56 ID:emvZhRbY0
が、しかし。
「……」
明かりがさすその空間は、見覚えのある大広間に繋がっているのでした。
「あ…れぇ?」
何が起こったのか分かりません。
私はサヤさんに聞きました。
「たしか、一本道を渡ってきましたよね。どうしてまた大広間に戻ってしまうのでしょう」
サヤさんは気がついたように言います。
「あれ。ぼくたちが今出てきたのって、ぼくが選んだ右側の通路からですよ」
…ということは、最後の2つの道は繋がっていて、私とサヤさんは元の大広間に戻って来てしまっただけなのでしょうか。
そうなると、ここには出口が無いのでしょうか。
「そんなことはありません!」
私はとっさに考えを振り払います。
「きっと出口があるはずです。私が出した煙魔法だってここの広間に繋がっていましたし、今まで見てきた置き物も過去にここに遊びに来た人たちがいた証ではないですか!」
そこまで言って私は、ある考えが過ぎりました。
煙魔法はこの広間で消えてしまったではないですか。置き物はあっても、出口は見つからなかったではないですか。
過去にある屋敷に入った旅人がいました。
その人は暗い屋敷のなかを散策し、探検をしました。
しかし道に迷ってしまい、屋敷のなかを彷徨いました。
そして、とうとう出口が見つかることはなく、旅人はひとり生き絶えてしまいました。
…その旅人は、今も屋敷のなかを彷徨っているのでしょうか。
見ると、大広間の真ん中に、私とサヤさんを追いかけてきた黒い妖怪が私たちを見て立っているのでした。
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