10:名無しNIPPER
2021/09/03(金) 00:27:14.28 ID:dX1WBd8vO
彼はどんな気持ちでこの歌を作ったのだろう。誰を想い、どんな希望と絶望で歌っているのだろうか。悲しい気持ちになってしまうのに、気がついたときは私はこの歌の虜になっていた。
誰かに春を売った後、私は決まってこの歌を流すようになった。まだ見ぬ誰かに、こんな気持ちを抱くのだろうかと。誰かを好きになることは、果たしてあるのだろうかと。
そんな希望を持つことが、私にとっては絶望でもあった。
まだ幼い頃からこの娼館に住むようになって、オーナーにあてがわれた男の相手をしたのはもう数えきれないほどだ。子どもの方が良い、という趣味の人もいれば、子どもに手を出す気にはなれないとおしゃべりだけして帰る人もいた。
まだその行為の意味もあまり理解していないときから、私はそうやって生きてきた。それを理解したときは何度か吐いて、やがて生温い絶望と諦めが私を包んだ。
あんな親のもとから離れて、お金には困らない生活ができて良いと想う自分。
普通の生活をして、普通の愛情を注がれてみたかったと想う自分。
わがままなことなのかもしれない。ないものねだりと言われたらそれまでかもしれない。
それでも私は、普通の愛情というものを知りたかった。源氏名で売る春ではなく、私の本当の愛情を誰かに注ぎたかった。
そう思ってしまうことが、絶望だった。
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