16: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:29:36.08 ID:UdHDSlcF0
「さてここまでライブを見てみてどうだい?」
結局私はオーナーと一緒に可奈ちゃんのライブを見に来ていた。
「やっぱり来るべきではなかった、そう思います」
17: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:36:37.35 ID:UdHDSlcF0
「最後までは聞いていきますが、二度と彼女の視界に入らないように気を付けます」
『Clover Days』という曲を仲間と一緒に歌う姿で共に笑って歩いていける仲間も見せてもらえた。今更私なんて彼女の道に必要ない。
いや、そもそも私が必要だった時なんてなかったのかもしれない。
18: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:42:17.18 ID:UdHDSlcF0
「さて次が最後の曲なんだけど」
しばらくトークを行った後、ピアノの子、確か恵美ちゃんが話をまとめて次の曲の入る気配を見せるけれど何かあるらしい。
「本当だったら私たち3人の曲なんですけど。今回、私のわがままで一人で歌わせてもらいます!」
19: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:46:39.97 ID:UdHDSlcF0
以前ライブハウスで聞いた『パンとフィルム』よりも切なく恋を歌ったその曲。
まだ幼さが残る彼女らしくない感情が込められたその歌はまるで彼女が本当に恋をしてきたようで。
誰に? 同級生? プロデューサー? いや
20: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:52:08.50 ID:UdHDSlcF0
私は彼女にもバンドにも最後まで向き合えなかったし、代わりに抱きしめようとすることもできなかった。その思いが胸に突き刺さる。
それでも目を逸らさず最後まで聞くのがせめてもの私の贖罪。
そう考えていた時に可奈ちゃんがこちらを向いた。
21: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 22:57:24.93 ID:UdHDSlcF0
「あっ」
そうだ。最近夢で何度も思い返す彼女の歌。
―スマイルンルン〜♪ らんらららーん〜♪ 笑顔に〜なって〜♪―
22: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:02:27.14 ID:UdHDSlcF0
「みなさんアンコールありがとうございます!」
アンコールの声に応えて本日参加したメンバーが再度出てくる。
「アンコールの前に今日は私の公演ってことで少しだけ私の話をさせてください」
23: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:04:56.24 ID:UdHDSlcF0
「だからたくさん挫折したり回り道したこともあったんです」
けれども彼女の真剣な言葉に会場の空気も変わる。
「歌を教えてくれた人に向いてないって言われたり、オーディションで落ちたり、歌の練習や勉強をするなって言われたり」
24: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:06:21.07 ID:UdHDSlcF0
「にゃはは。あのときはいろいろあったよね」
「それにそのおかげで可奈さんは新しい歌い方を覚えることができたんですよね」
「え、ありさの知らない話なんですけど!? 聞かせてください!」
25: ◆iGEcIiQPPHZy[sage]
2021/08/15(日) 23:09:23.95 ID:UdHDSlcF0
「それに昔歌が向いてないって言われたことも」
そういってまた一瞬だけ彼女は私の方を見た、気がした。
「その時私は一度歌をやめちゃったけどそこで楽器に触れることができました。きっとそれがあったから≡君彩≡でバンドをやることにつながったんだなって。それに歌が大好きだってことも再確認することができました」
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