9: ◆CrAv5R2gC.[saga]
2021/08/13(金) 03:37:20.31 ID:rzwHBgf90
「……あれか!」
突如Tが叫ぶ。その指の先に顔を向けると、吹雪が顔をこわばらせた。
「間違いありません…!」
吹雪とTの目には『そいつ』が映っていた。むこうも気づいたようで一直線にこちらへ向かってくる。
「中将殿。すみませんがハンドルを変わっていただけないでしょうか」
席を変わったTは船から上半身を乗り出し、構えを取った。
両手を向こうからくるそいつに狙いを定め・
「破ぁ―――――!!」と叫んだ。
するとTの両手から青白い光弾が飛びだし、『そいつ』にぶつかった。
その瞬間、青白い光に包まれたそいつは風に吹かれた灰のように形を崩して消えた。
「これで安心だな…」
そう呟いて片手でタバコに火をつけるT。
一瞬のことに立ち尽くしていた睦月だったが、
「睦月ちゃん!」
という声に我に返る。
船内には笑顔で手を振る吹雪がいた。
「吹雪ちゃん!」
睦月は吹雪のもとへ駆け寄り、思わず立ち上がりバランスを崩しそうになった彼女を抱きしめた。
「司令官…これは?」
「…彼は表向きには知られていないが、深海棲艦…もっと言えばそこも含めた怪異へ対抗すべく軍が育て上げた……らしい」
「……はい?」
「私も詳しくは知らないのだが、艦娘の存在が確認される前から、軍が秘密裏に研究を重ねて、結果彼が誕生した……まぁ、そういった噂が流れているんだ」
「そんなでたらめな…」
「だが、実際どうだ?これが海軍最終防衛ライン、鎮守府生まれのTさんだ」
噂の真偽・その力は何なのか。そもそも怪異とは何なのか。そこへの対抗策に着手した軍は…言いたいこと、聞きたいことはたくさんあった。
だが、睦月にとってそんなことはどうでもよかった。
彼女の頭にあったもの。それは鎮守府生まれってすごいという感嘆であった。
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