7: ◆CrAv5R2gC.[saga]
2021/08/13(金) 03:05:42.91 ID:rzwHBgf90
「はい…どちら様でしょうか」
門を叩き数秒もしないうちに紫髪の少女が顔を出した。
「中将殿から依頼を受け参りました。大本営直属特殊部隊のものです」
男が挨拶をしたが、少女――睦月は数秒固まった。
「……あっ、失礼しました!」
「全然大丈夫。それよりも中将殿は?」
申し訳なさそうに頭を下げるのを手で制して案内を促す。大本営直属とはいえ公の部隊ではない。
特に提督でない艦娘にはこのような反応もされることも珍しくなかった。
「案内します」と言われ彼女についていく。
さすが戦果を挙げている鎮守府といったところか。廊下はゴミ一つ落ちておらず、管理が行き届いていることが見て取れた。
「……艦娘ではなくて驚いたかい?」
「ふぇっ!?……はい」
先頭を歩きつつもチラチラ振り返ってくる睦月に問いかけると、図星だったため睦月の肩は跳ね上がった。
「『そういうもの』に対抗する部隊があると聞いていたもので、てっきり…」
「わかるよ。他の鎮守府でもみんな同じような反応だった」
「……あのっ」
「心配するな。俺がなんとかするさ」
堂々とした返事に睦月は安堵よりも不安がよぎる。
彼はどこから見ても人間だ。たしかに他の人間と比較したところ腕っぷしは頼りになりそうだ。
だが、それだけ。
海を走れないし深海棲艦に立ち向かう術を何も持ち合わせていない。
吹雪は睦月の目の前で気を失った。容体は日に日に悪化しており、今は布団の中で震える日々を過ごしている。
情報としては提督伝いで聞いたものの、そんなものは見なかった。見えなかった。
睦月自身が見ることすらできなかった存在に、人間が立ち向かうことが可能なのか。
「……こちらです」
色々と考えていると執務室の前までたどり着いていた。
「ありがとう。あと、君からも話を聞きたいから同席してもらえないかな」
「それはかまいませんが……」
助かる。彼は爽やかな笑みを返し執務室の扉を叩いた。
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