2: ◆CrAv5R2gC.[saga]
2021/08/12(木) 10:30:18.02 ID:1HuCQJGK0
「……ん?」
話のネタも兼ねてあたりを警戒していた吹雪だったが、進行方向のぼやけた水平線上に影を見つけた。
艦娘といえども視力は限界がある。はっきりとはわからないが、かろうじで人型であることはわかった。
「睦月ちゃん。あれ、なんだろう」
「え……どこ?」
「どこって…ほら、正面。遠くになにか見えない?」
先ほどよりも大きくなった影に指をさす。先ほどよりも近づいている。
あきらかにこちらへ近づいてきていた。
「……どこ?」
今や目を細めなくても目視できる『それ』が彼女には見えていないようだ。
その反応を見た吹雪の背筋に冷たいものが走る。
「え?吹雪ちゃん、どこ?」
「目のま――」
目の前だと伝えようとした吹雪は固まる。『それ』は表情が見て取れるほどの近さまで迫っていた。
薄汚れた真っ白の装束が存在を却って目立たせ、口角をつり上げよだれを垂らしているものの口からは何も発していない。
見開かれた目は焦点が合ってないにもかかわらず、こちらをめがけて猪突猛進してくる。
これが深海棲艦であればよかった。『それ』の正体がわからない吹雪は足がすくみ動けないでいた。
「吹雪ちゃん!?どうしたの?」
吹雪の異変に気付いた睦月だがもう遅い。吹雪にしか見えていない『それ』はすでに彼女の目と鼻の先で――
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