【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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62: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:27:13.11 ID:OS/CCdyu0
 マックイーンの最も危惧する敵は後方にはいない。いるのは自身の左足。例えるならタイマーの見えない時限爆弾を抱えて走っているようなもの。爆発が避けられないなら、せめてゴール板を駆け抜けて盛大に散りたい。そんな願いがマックイーンの走りに反映されている。生き急いでいるように見えるのならば、それが真実。彼女の今抱えている境遇を誰もが知っているからこそ、痛々しくも懸命に走るその姿に心を打たれるのだ。大観衆の視線と声援を独占するマックイーンはペースを落とさず下り坂を進み、独走状態で第三コーナーへと差し掛かった時、そこからレースは大きく動くことになる。先頭を行くマックイーンにも観客席から轟いた大きな歓声とどよめきがそれを伝えていた。

「七番手、六番手、五番手、ここにきてスパートを掛けてきたのはやはりこの娘だトウカイテイオー! メジロマックイーン逃がすまじとグングンと距離を詰めている! 大外不利も何のその! トウカイテイオーがきているぞ! トウカイテイオーがきているぞ! まさに無重力状態だトウカイテイオー! 三度の骨折を経験したとは思えないほど鋭い走り! あっという間に二番手ミホノブルボンを抜き去り、今先頭のメジロマックイーンと並んだ!」


63: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:28:03.95 ID:OS/CCdyu0
「きましたわね、テイオー!」

「今日こそ勝たせてもらうよ、マックイーン!」

「望むところですわ!!」
以下略 AAS



64: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:28:48.88 ID:OS/CCdyu0
「幾度となく……。幾度となく挫折を味わいながらもその度に立ち上がってきた不屈のトウカイテイオー。同じく絶望の淵に立ちながらも鋼の強さで再びターフへと舞い戻ってきたメジロマックイーン。二人のウマ娘が今、最終コーナーに差し掛かった! もう言葉はいらないか!?」

「いや、まだだ!」

 実況の言葉を遮るかのようにマックイーンの耳元で聞こえた声。そこには、走るマックイーンの耳にしがみついたネズミがいた。
以下略 AAS



65: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:29:31.74 ID:OS/CCdyu0
「これは奇跡か神懸かりか!? 猛烈な勢いで上がってくるウマ娘がいるぞ! タマモクロス! タマモクロスだ! 小柄な体躯を活かして内ラチ沿いから凄まじい追い込みを見せる! 最後尾から中団をまさかのゴボウ抜き! あっという間にメジロパーマー、ミホノブルボンすらも追い抜き、トウカイテイオーとメジロマックイーンに喰らい付かんばかりだ!」

 白くて、小さな体だった。
 泣き虫で、甘ったれだった。
 だけどそいつは、負けん気と根性は他のどの連中にも負けなかった。
以下略 AAS



66: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:30:17.32 ID:OS/CCdyu0
(そうだ……俺はあの時、あいつに言ってやれなかったこと。それがずっと心残りだったんだ)

 たった一言。あの日、あいつに言ってやられなかった心からの賛辞。それだけが唯一の心残りであり、無念だった。それに気づいた時、ネズミの体が淡い光に包まれる。

 残り200m。
以下略 AAS



67: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:30:51.32 ID:OS/CCdyu0
「並んだ並んだ! 驚異の末脚で二強に並んだのはスピードでもスタミナのウマ娘でもない! 根性のウマ娘、タマモクロスであります!」

 最終直線でまさかの三者横並びのデッドヒート。熾烈な先頭争いを繰り広げる三人にはもう周囲の熱狂や歓声は届いていない。彼女たちの意識や視線は眼前のゴールにのみに向けられていた。

「まさかまさかの三つ巴! トウカイテイオーかメジロマックイーンかタマモクロスか! 夢のレースの終演はもうすぐだ!」
以下略 AAS



68: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:32:13.59 ID:OS/CCdyu0
 あれから一週間が経った。

 日本ダービーと同条件で行われた模擬レースはあくまで練習試合という名目で行われたものでありながら、ファンの間では歴史には残らないが、記憶に残る名勝負≠ニ囁かれている。

 とある総合病院の入院病棟。その中でも最も高額な個室の扉をトウカイテイオーは叩いた。
以下略 AAS



69: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:33:03.43 ID:OS/CCdyu0
「まぁ、テイオー」
 
 キングサイズの大きなベッドで横になっていたマックイーンはテイオーの姿を見ると、上体を起こして笑みを見せた。

「少し痩せたね。ちゃんと食べてる?」
以下略 AAS



70: ◆3OwI56KSYQ
2021/08/08(日) 00:33:50.69 ID:OS/CCdyu0
あの日、並んでゴールを駆け抜けた二人は揃って故障。怪我の程度は違えども、これまで限界を超えて酷使してきた二人の足はもう二度とレース復帰は出来ないと宣告されていた。実質、あのレースが二人にとって全力で臨めた最後の勝負だった。

「あーあ、勝ちたかったなぁ〜」

 松葉杖を立てかけ、マックイーンの横にある椅子へと座ったテイオーは天井を見上げながら大きく伸びをしながらそう呟いた。
以下略 AAS



71: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:34:42.66 ID:OS/CCdyu0
「ねぇ、マックイーン」
 
「なんですの? テイオー」

「足が良くなったらさ、天気のいい日にお散歩行こうよ。どこか公園にでも行ってさ、噴水の周りを歩いてぐるっと一周するの。それで決着を付けるってのはどう?」
以下略 AAS



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