【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:23:19.00 ID:OS/CCdyu0
「さぁ、気を取り直しまして五枠九番、十番からは新世代、BNWよりウィニングチケットとビワハヤヒデが参戦」
「ウィニングチケットもダービーを獲ってますし、ビワハヤヒデも有馬でのリベンジに燃えていると思いますよ」
「六枠十一番、十二番からは芦毛の二大巨頭、怪物<Iグリキャップと白いイナズマ<^マモクロスが出走致します」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:24:07.19 ID:OS/CCdyu0
スターティングゲートに入ったマックイーンは、隣で準備運動がてらに首を回しているウマ娘に話しかけた。こうして彼女と言葉を交わしたのはいつぶりだろう。色々話したいことを頭の中に用意していたつもりだったが、何を置いてもまずはこの言葉を先に伝えなければならない。
「お待たせしました」
桜の花びらを運ぶ風が栗色の髪を撫でている。柵越しに青い瞳を真っ直ぐこちらへと向けたトウカイテイオーは、マックイーンを見つめ返して答えた。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:25:16.86 ID:OS/CCdyu0
「「「うぉぉぉおおお!!!!」」」
20万人もの大歓声でスタンドが揺れている。様々な想いや願いを胸に十三名のウマ娘たちがターフを駆ける。まず先頭に立ったのはマックイーン。それに並走する形でミホノブルボン、メジロパーマーの三名が三つ巴の先頭争い。その三馬身後ろをエルコンドルパサー、イクノディクタス、ビワハヤヒデ、ウィニングチケットが追走。そこから更に二馬身後ろをスペシャルウィーク、内側から離れてやや大外へと向かいましたトウカイテイオー、オグリキャップ、マチカネタンホイザ、タマモクロス、ライスシャワーの順位でレースは進んでいく。
(序盤は大外後方から様子見。そこから足首のバネを活かして一気に上がってくる。まさに定石通りのテイオー走法。ですが、わたくしは負けるわけにはいかないんです!)
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:25:53.85 ID:OS/CCdyu0
「おーっと! なんとここでメジロマックイーンが仕掛けて行ったぞ! これは予想外! 異常と言えるくらい速すぎる展開ですがどう見られますか細江さん」
「冷静で聡明な彼女らしからぬ走り方ですね。序盤からこのペースでは後半のスタミナ切れも充分ありえますよ」
「さぁ、メジロマックイーンの大逃げに釣られて他のウマ娘たちも一気に上がってきた! 先頭は変わらずメジロマックイーン。二番手にメジロパーマー、その後ろ三番手にミホノブルボン、エルコンドルパサーとウィニングチケットがほぼ横並び。その一馬身後ろにオグリキャップ、スペシャルウィーク、ライスシャワー。更にその二馬身後ろにイクノディクタス、トウカイテイオー、ビワハヤヒデ、タマモクロス、最後尾にマチカネタンホイザという順番であります」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:27:13.11 ID:OS/CCdyu0
マックイーンの最も危惧する敵は後方にはいない。いるのは自身の左足。例えるならタイマーの見えない時限爆弾を抱えて走っているようなもの。爆発が避けられないなら、せめてゴール板を駆け抜けて盛大に散りたい。そんな願いがマックイーンの走りに反映されている。生き急いでいるように見えるのならば、それが真実。彼女の今抱えている境遇を誰もが知っているからこそ、痛々しくも懸命に走るその姿に心を打たれるのだ。大観衆の視線と声援を独占するマックイーンはペースを落とさず下り坂を進み、独走状態で第三コーナーへと差し掛かった時、そこからレースは大きく動くことになる。先頭を行くマックイーンにも観客席から轟いた大きな歓声とどよめきがそれを伝えていた。
「七番手、六番手、五番手、ここにきてスパートを掛けてきたのはやはりこの娘だトウカイテイオー! メジロマックイーン逃がすまじとグングンと距離を詰めている! 大外不利も何のその! トウカイテイオーがきているぞ! トウカイテイオーがきているぞ! まさに無重力状態だトウカイテイオー! 三度の骨折を経験したとは思えないほど鋭い走り! あっという間に二番手ミホノブルボンを抜き去り、今先頭のメジロマックイーンと並んだ!」
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:28:03.95 ID:OS/CCdyu0
「きましたわね、テイオー!」
「今日こそ勝たせてもらうよ、マックイーン!」
「望むところですわ!!」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:28:48.88 ID:OS/CCdyu0
「幾度となく……。幾度となく挫折を味わいながらもその度に立ち上がってきた不屈のトウカイテイオー。同じく絶望の淵に立ちながらも鋼の強さで再びターフへと舞い戻ってきたメジロマックイーン。二人のウマ娘が今、最終コーナーに差し掛かった! もう言葉はいらないか!?」
「いや、まだだ!」
実況の言葉を遮るかのようにマックイーンの耳元で聞こえた声。そこには、走るマックイーンの耳にしがみついたネズミがいた。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:29:31.74 ID:OS/CCdyu0
「これは奇跡か神懸かりか!? 猛烈な勢いで上がってくるウマ娘がいるぞ! タマモクロス! タマモクロスだ! 小柄な体躯を活かして内ラチ沿いから凄まじい追い込みを見せる! 最後尾から中団をまさかのゴボウ抜き! あっという間にメジロパーマー、ミホノブルボンすらも追い抜き、トウカイテイオーとメジロマックイーンに喰らい付かんばかりだ!」
白くて、小さな体だった。
泣き虫で、甘ったれだった。
だけどそいつは、負けん気と根性は他のどの連中にも負けなかった。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:30:17.32 ID:OS/CCdyu0
(そうだ……俺はあの時、あいつに言ってやれなかったこと。それがずっと心残りだったんだ)
たった一言。あの日、あいつに言ってやられなかった心からの賛辞。それだけが唯一の心残りであり、無念だった。それに気づいた時、ネズミの体が淡い光に包まれる。
残り200m。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:30:51.32 ID:OS/CCdyu0
「並んだ並んだ! 驚異の末脚で二強に並んだのはスピードでもスタミナのウマ娘でもない! 根性のウマ娘、タマモクロスであります!」
最終直線でまさかの三者横並びのデッドヒート。熾烈な先頭争いを繰り広げる三人にはもう周囲の熱狂や歓声は届いていない。彼女たちの意識や視線は眼前のゴールにのみに向けられていた。
「まさかまさかの三つ巴! トウカイテイオーかメジロマックイーンかタマモクロスか! 夢のレースの終演はもうすぐだ!」
以下略
AAS
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