61: ◆3m7fPOKMbo[sage saga]
2021/09/20(月) 16:41:01.89 ID:pdmSh92D0
かすみ「……うくっ…はぁっ…はぁっ……」
あなた(荒い息を付きながら、その注射器を首元から離したかすみちゃんは、ゆっくりと壁に寄り掛かる)
あなた(手を貸す事だけは、かすみちゃんは嫌がった。それはかすみちゃんのプライドなのだ。ぼくと同じ時に死ねないかすみちゃん自身が縛った鎖か、または二か月という時間離れていた間に、開いてしまった距離か)
かすみ「先輩…すみません、せっかくのデートなのに……」
あなた「いいんだ。それより、もう少し休んでいこう」
かすみ「はい…そしたら、この痛いのも…治まり、ますから……」
あなた(涙を目に一杯溜めながら、少し悪くなった顔色でも、振り絞る力。燃え上がる、生きるという炎)
あなた(だから知っていて欲しいのだ。きみと同じように振り絞って煌々と明るく燃えた、きみが知らない炎の話を)
かすみ「すごい色遣いだ……鮮やかで、とても力いっぱい」
あなた「かすみちゃんが気に入ってくれて、良かった」
かすみ「このひまわりの絵、すごいですよ。草原の中に一本だけなのに、全部にきちんと色があって、ひまわりなんか特に」
あなた「ああ、この絵の実物すごいな。初めて見るや。画集なんかと全然違う」
かすみ「ところで、どんな画家さんなんです?」
あなた「今年の春にカフカ・ぺチャック症候群で亡くなった子だよ。13歳でね。彼女の絵が、とても好きなんだ」
かすみ「そんなニュースを見たような見てないような…あれ?」
あなた「ん?」
かすみ「薫子さん、ですよね…」
薫子「公開すべきじゃない」
支配人「しかし……」
薫子「故人がそうすべきじゃないと思ってる」
ランジュ「でも、最期の作品なのよ。あの子の…あの子が、ベッドから這い出て…」
薫子「それでも、これは見せるべきじゃない」
かすみ「うわ、ランジュだ。なんでここに?」
あなた「この画家は……ランジュさんの従妹なんだよ」
かすみ「え?」
かすみ「ホントだ…写真も、確かに面影、ありますね…」
あなた「大好きな絵を描き続けたくて、それで死に物狂いで絵を描いて、こうして世界中の人たちが褒める位の輝きを残していった」
あなた「…そういう、輝きを残していったんだ。その行き先は、安らぎある楽園であるべきなんだ」
かすみ「先輩……かすみんは、そんな輝きを」
あなた「スクールアイドル、中須かすみの輝きは誰もが知ってるさ。世界で一番かわいいかすみんってね」
あなた「そしてまだまだ、これからも輝かなくちゃ」
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