高木さん「もしもわたしが転校したらどうする?」西片「えっ……?」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2021/07/23(金) 22:02:21.13 ID:sp1eyNH5O
「熱いね」
「うん……熱いね」

小さな呟きが蝉の声に負けることなく耳に届いたのは、きっと手をつないでいるからだ。
触れ合っているだけで、齟齬が格段に減る。

「ずっと、こうしてたい」

そう言いながら、強めに手を握ってくる。
ちょっと躊躇いながらオレもそっと握る。
高木さんの細い指が折れてしまわぬよう。

「そろそろ図書館の中に戻ろっか?」
「うん……そうだね」

名残惜しいけれど、涼しい館内のほうが手をつなぐには相応しいだろう。と、その前に。

「ごめん。ちょっとオレ、トイレに……」
「うん、わかった。いいよ。行こっか」
「えっ……?」

汗にならなかった分のジュースを尿として排出しようとするオレの手を、高木さんは離さない。何故かトイレについて来ようとする。

「た、高木さん、さすがにトイレは……」
「ずっとつないでるって約束」
「で、でも、それは明日の約束で……」
「予行練習が必要なんでしょ?」

逃げられない。避けられない明日が、来る。

「ち、ちなみに大は……?」
「うーん……えへへ。そうだなぁ」

高木さんは珍しく照れながら、耳打ちした。

「一緒にしよっか?」
「フハッ!」

困惑が愉悦となりて脳内を瞬時に駆け巡る。

「明日、愉しみだね」
「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

高らかに、モリモリとまるでウンコのように空に聳える入道雲の頂上まで届けと言わんばかりに哄笑して図書館の司書に怒られたことをオレは、大人になっても忘れないだろう。

歌うように表情豊かな哄笑のカンタービレ。

遠い未来に、自分が偉人シリーズの漫画になるとは思えないけれど、もしかしたら明日、糞好きのモーツァルトもびっくりな展開が待っているかも知れないと思うと、愉しみだ。

忘れられない夏に、なりそうな予感がした。


【耳打ち上手な高木さん】


FIN


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