【ウマ娘】エアグルーヴ「たわけがッ! 今日が何の日か知らんとは……」
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66: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/10/14(木) 02:12:49.14 ID:4UoSw/jV0

――ここは宿舎のとある一室。就寝時間が近付いてきたころ、人目を憚るように集まった三つの影があった。


 一見ただの女子会にも見えるそれだが、しかし纏う気迫が尋常ではない。

 とあるものは目を曇らせ、とあるものは目を獰猛に瞬かせ、あるものは呆れるように追随するも、その魂胆は透けて見えていた。

 一室に入り、周辺に人影がないことを確認するとそそくさと鍵を閉める。その動作は、一歩間違えれば盗人のそれ。

 故にこそ迅速、故にこそ隠密。彼女たちは今此処では忍者とも呼べた。


「――さて、此処に集まってもらったのはほかでもない」


 そのうちの一人、目を獰猛に瞬かせていたウマ娘が口火を切る。

 異様な雰囲気に飲み込まれる他二人だったが、しかし彼女たちも慣れっこなのだろう。飲み込まれることはなく、逆に溶けるように混ざった。


「夏合宿が始まり、我々は運命と分かたれた――」


 仰々しい語り。かの皇帝を思わせる重厚な雰囲気はしかし、鈴の音を転がすような可愛らしい声音だった。

 だが、やはり雰囲気は重厚。重々しい空気が、空間を支配している。


「よって、我々は運命を取り戻さなければならないのだ!」
「はいはーい、質問質問!」


 ……三人のうち一人、目を曇らせていたウマ娘が手を上げた。


「スマホは圏外で使えない、連絡手段がないのに、どうやってウンメイを取り戻すのー?」
「ふっふっふ……。それはもう考えてあるのだよ――マヤノ君!」


 金色の瞳に疑問符が浮かぶ。いつもは直ぐにでも理解するマヤノトップガンが言葉を理解できなかったことに、ウマ娘――トウカイテイオーは僅かにほくそ笑んで続ける。


「マヤノが解らないってことは、大体の人には解りようがないってことだね!」
「むー。なんだかそう言われるとフクザツ〜」
「でも、それがこの作戦の成功率を物語ってるんだよ!」


 びしり、とトウカイテイオーは指を一本立てて、自慢げにほほ笑んだ。

 いつもの強気な表情に、二人は実家のような安心感を抱きつつも……。


「……あんまり奇をてらった方法だと、逆に失敗しやすくなるんじゃありません?」
「ネイチャは心配症だなぁ。だいじょーぶいぶい! 何せワガハイは無敵のテイオー様ぞよ?」


 その自信が何より不安なんだけどなーとナイスネイチャは息を吐く。こうなったトウカイテイオーは止めることが出来ないと、彼女なりに納得していたからだ。

 ……とはいえナイスネイチャ、冷静になって考えろと二人を諭す立場にいるが、その本心はむしろ推進派のそれである。ここにいることが何よりの証拠だ。

 マヤノトップガンとトウカイテイオーが堂々と作戦を決行しようとする立場。比較すると、本心はまんざらではない……というか、むしろ嬉々として参加したいまであるナイスネイチャのそれは、少し卑怯なものだといえた。

 ともかく。三人が結託した以上作戦は決行される。その結果がどうあれ。


「では、本作戦の趣旨について話すのであーる!」


 トウカイテイオーは手に持っていたメモを二人に配り、四角い何かをそれぞれに2つずつ手渡した。

 これが一体何なのか、特になじみがあるマヤノトップガンは直ぐに理解したが、敢えて口をつぐむ。この後に解説が待っているのだからか、口を出すのは野暮であることを理解したのだ。


「マヤノの言う通り、スマホは圏外で使えない。夜間外出の禁止があるから、外を出歩くこともできない。つまりこのままでは、ボクたちは……トレーナーと寝る前にお話が出来ない!」
「毎晩トレーナーちゃんの声を聞いてから寝てたから、マヤ、聞かないと寝れないかも……」
「……ま、まぁ、トレーナーさんと連絡を密にした方がいいのはそうですし?」


 理由は三者三様だが、そこにある想いは全員一緒。

 ……つまり、担当トレーナーと夜の間もお話したい、という思い。

 トウカイテイオーは同志の存在に感謝の念を抱きつつ、計画の概要をまくしたてる。



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