【ウマ娘】エアグルーヴ「たわけがッ! 今日が何の日か知らんとは……」
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32: ◆FaqptSLluw[saga]
2021/07/27(火) 19:17:33.22 ID:h0ubBXHG0



「……むぅん。にしても、やはり開会式は壮観だなッ」
「そうですね……! 特にこの曲たち……興奮しますっ!」
「む、俺には良く解らんが……知ってる曲なのか?」
「はい! あ、さすがにこの曲は……トレーナーさんも知ってるんじゃないですか?」
「むッ。懐かしいなぁ、おもちゃ屋の店頭でよく聞いていた……ッ。子供のころは、この世界に行ってみたいと憧れていたものだッ」


 トレーナーの発言に、ライアンは思わず驚きの声を上げてしまう。

 筋トレ一筋だから、子供のころもスポーツ少年だったのだろう、と高を括っていた。だが、実際はそうではなかったらしい。


「トレーナーさんが、この世界に?」
「うむ。剣や魔法を使って、悪を倒してみたかった。……母親にゲームをねだって、お小遣いで買いなさいと無理難題を申し伝えられた時は絶望したな……」
「……そう、なんですね」
「以外か?」
「ええ、まぁ……。だって、トレーナーさんって筋トレ以外のことに興味なさそうでしたから」


 ライアンの発言に、トレーナーは思わず驚きの声を上げてしまう。

 確かに筋トレは趣味だが、それ以外にも趣味はある。それなりの期間共に居たライアンならばわかっていたことだと考えていた。

 そこでふと、自分のことを話していないことを思い出す。


「ライアン、思った以上に俺は、自分のことを君に話していなかったようだッ」
「まぁ、トレーナーさんの名前と年齢くらいしか知りませんからね……」
「俺は君が思っている以上に……いろんなことに興味があるぞッ」
「なるほど、例えば?」
「ふぅむ。料理とか、ゲームとか……楽しそうなこと、面白そうなことには興味があるッ!」
「トレーナーさんって料理するんですか?!」
「一人暮らしだからしないわけがないだろうッ! ああ、それと――君にも興味があるぞ、ライアンッ!」


 ぴしり、と。ライアンが固まる。

 想像していなかったバックファイアに、心臓が跳ねるような感覚を覚えた。

 ひょっとして、自分のことなんて特に考えていないのでは――なんて小さく考えていたところを狙い撃ちされるような気持だった。

 同時にそれは、恥ずかしさを内包していた。……今まで覚えたことがない気持ちが、ふと首をもたげる気がして。


「どうした、ライアンッ?」
「な、何でもありませんッ! あ、オープニングプログラムが次に移るみたいですよ?!」
「おぉ、やはりこれも――」


 無邪気な子供のように、テレビにかじりつくトレーナー。

 いつものトレーナーの姿だが、なんとなくいつもより――楽しそうな雰囲気で。

 そんな様子に、ライアンもまた、彼のことをよく見ていなかったことに気付いた。

 良くも悪くも、両者ともストイックに過ぎたのだ。

 胸を震わせる鼓動が五月蠅いくらいに、反響する。ライアンは真っ赤になった顔をトレーナーに見られないようにと、少しの間顔を逸らした。

 背後では、開会式終了の宣言が流れていて、トレーナーはそれらに夢中だった。


――それが果たして、ライアンにとって良いことだったのか、悪いことだったのか……。それは、神のみぞ知る。


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