【ウマ娘】エアグルーヴ「たわけがッ! 今日が何の日か知らんとは……」
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◆FaqptSLluw
[sage saga]
2021/07/27(火) 14:45:30.52 ID:h0ubBXHG0
「そして来るは近場の神社!」
あの後、ナイスネイチャに縋った俺は、有益な情報を手に入れた。
これであればある程度の意思を示しながら、理由があるために事案にもならない。
ありがとうナイスネイチャ、君のことは忘れない。
とはいえ、理由も聞かされずに連れてこられたのだから、マヤノは少しだけご機嫌斜めだ。
「……トレーナーちゃん、いきなりどーしたの?」
「いや、マヤノの目的も果たせつつ、俺の保身が出来る折衷案があったんだよ」
「……せっちゅーあん?」
「ああ、予約は取り付けてあるから、行こうか」
そう言いながら、何ともなしにマヤノの手を握る。
ぴくりとマヤノが動いたので、マヤノの顔を覗き込んで「大丈夫か?」と尋ねた。
すると頬を少し赤くして、マヤノは頷いた。
大丈夫かな、なんて思いながら、手を引いて参道の外で待機する。
「中に入らないの?」
「ああ、さすがにそこまでは……迷惑だろうし」
「……? トレーナーちゃん、何でここに来たの?」
マヤノがそう聞いた時だった。境内へ続く扉が静かに開いて、雅な音楽が響いた。
参進の議というらしいそれ。神社の外から、砂利を踏みしめる音が聞こえてくる。
マヤノの問いには、もう答えられない。静謐な雰囲気が、口を開くことを良しとしなかった。
それだけ静かで厳かな雰囲気だからだろうか、音が鳴ったほうへと視線は吸い寄せられる。
「わぁ……」
マヤノの口から、思わず感嘆の息が漏れた。
俺ももう少し若ければ、マヤノみたいに息を漏らしていたかもしれない。
それほどに、それは美しい光景だった。
新雪のように真っ白な白無垢。薄く紅を引いた唇、頬に差した朱が一層際立って、まるで浮き上がるようだった。
……そう、今日の目的はこれ――神前式の婚姻の見学だ。
偶然学園の関係者で神前式の婚姻を行う夫婦がいたらしく、少し無理を言って参進の議のみを見学させてもらうことになったのだ。
夫婦、新郎新婦の親族、神職が整列し、境内へと入っていく。――その後ろ姿を見送り、ぱたりと閉じられた扉を見て……俺はようやく息を漏らす。
「どうだった?」
「すごく……綺麗だった」
「だろ? マヤノが思ってるよりも、結婚っていろんな選択肢があるんだよ。だから、いろんなことを知って、学んでから結婚について考えてみるのもいいんじゃないか?」
「……そうだね、こんな結婚式もあるんだって思ったら、知らなきゃソンだよ〜」
そう思ってもらえて何よりだ、と思う。
こんな感じで話を持っていけば、先ほどの結婚云々の話も誤魔化せるはずだ。
そろそろ帰ろうか、とマヤノの方を見て――。
「トレーナーちゃんはどういう結婚式がいいの?」
「……もうちょっと、マヤノが大人になったら話してやるよ」
雰囲気に充てられたマヤノが、潤んだ瞳でこちらを見つめていることに気付いてしまえば。
俺は、結論を先延ばしにすることしかできなかった。
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