【ウマ娘】エアグルーヴ「たわけがッ! 今日が何の日か知らんとは……」
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◆FaqptSLluw
[saga]
2021/07/19(月) 20:09:26.35 ID:/dmU8I1q0
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「それで、一体全体君はどうするつもりかね」
「それを悩んでいるのですわ……」
「まぁ、悩み事はそう簡単に解決しないものだからねぇ」
「私の悩み事の筆頭が何かおっしゃっていますわ」
「褒めるな」
「褒めていませんわ?!」
耳元で怒鳴らないでいただきたい。
「冗談は置いといて。本格的にどうするつもりかね。かなりの量があるようだし、同室のウマ娘とかに配ってはどうだろうか」
「普通の菓子でしたらそれも考えましたわ。でも知育菓子ですのよ?」
「……ふむ。君は知育菓子というものを幼稚なものであると捉えているようだね」
「……? 幼い子供向けに作られたものではなくて?」
知育菓子メーカーの担当者とて不服な認識だろう。
何せ知育菓子には尊ぶべき理念が存在するのだから。
「では君に問おう――。知育菓子とは、一体全体どのような菓子だと思う?」
「……そう聞かれると、難しいですわね」
「一言では説明できないだろう?」
「そうですわね、おっしゃる通りですわ」
「そも、知育菓子とは――子供たちに得難い価値観を提供する菓子群だ。むろんだが、子供たちから大人が学ぶことがあるように、知育菓子から我々大人に教えられる価値観もある」
「それは……?」
メジロマックイーン君は、いつの間にか前のめりになって話を聞いていた。
適当に受け流せばいいのに、まじめに受け取るところが――実に君らしくて好ましい。
だから君からは目が離せないのだ。
「――個性を伸ばす。失敗を楽しむ。違いを尊重する。これが知育菓子メーカーの掲げる理念だよ」
「個性を伸ばす、失敗を楽しむ、違いを尊重する――」
「どうだい、君に不足しているものはないかい? きっとあるんじゃないかい? 少なくとも――僕もこの理念には感じ入るところがあるよ」
「そう、ですわね……」
深く感じ入るように頷くメジロマックイーン君。
僕たち人間も、メジロマックイーン君たちウマ娘にも違いがある。個性がある。
挫折も失敗もある。それらを乗り越える力を知育菓子は育まんとしている。
むろん、そのコンセプトは子供向けのそれなのだろう。けれども、何事も捉え方次第で。
「さて、今の君には――それでも知育菓子が幼稚なものであると認識できるかい?」
「もう、狡いですわ。もうそんな認識は、私にはございません!」
「で、あれば。やることは決まったも同然だろう」
「……ええ!」
そういうなり、メジロマックイーン君はトレーナー室を辞した。
これから彼女は知育菓子を配って練り歩くことになるのだろう。
「……そうだ、一つ言い忘れていたな」
君だけが理解していても、果たしてほかのウマ娘たちは理解してくれるかな……?
メジロマックイーン君の声がそこかしこから響くのを聞きながら、僕は仕事に戻ったのだった。
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