6:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:17:11.23 ID:aRwz879jo
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星空凛。二十七歳。
7:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:17:54.63 ID:aRwz879jo
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花陽「シンデレラ」
8:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:20:55.74 ID:aRwz879jo
凛「――それにしても、突然過ぎてびっくりした」
花陽「そうかな? 花陽はずっとそうしたいって思ってたんだ。ここ、景色が綺麗で」
水辺を歩きながら、わたしの友達は変わらない笑顔でわたしに言う。景色なんてあんまりろくに見ていなかった。彼女についていこうと、ウェディングドレスの裾を持ち上げてわたしは彼女の背を追う。ぱちゃぱちゃ。水の跳ねる音がした。海辺ってこんなに歩きづらかったっけ。どうやっても入る砂に苦戦しながら、わたしは一歩ずつ彼女に近づいていく。
9:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:23:35.38 ID:aRwz879jo
こうやって、かよちんと会うのも話すのも久しぶりだった。いつからだったろう。それぞれの進路が別れたときだったかな。あるいは、その前。青春のきらめきってあまりにも一瞬だ。わたしや彼女たちが駆け抜けた日々は、きらきらと流れ星のように輝いては落ちて。褪せることもない思い出として胸には、残っている。
あの頃と変わらない呼称で私のことも、あなたのことも呼ぶ彼女は。また変わらないような笑顔でわたしへ振り向いた。
10:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:27:53.24 ID:aRwz879jo
わたしたちがスクールアイドルでは無くなってからいくつか月日が過ぎた。学校を卒業して、それぞれの道へ進んで。わたしはわたしが思っているより、平凡で幸せな人生を歩んでいた。困ったことに、あの高校生の瞬きに比べてきらびやかなものではなかったけれど、うん。充実はしていたのだと思う。それなり、それなりに。
短大を卒業したわたしは、自分のことを「凛」と呼ぶことを辞めた。就活に不利だったから。子供っぽいと揶揄されたから。色んな理由がそこにはあった。サナギが蝶になるような、綺麗な脱皮ではなくて。なんとなく流されるようにわたしはひとつずつ大人になったんだと思う。それをわたしは悪いことなのか判別することが今だって出来ていない。
――大人になるってそういうことよね。くるくると赤い髪を、昔のように人差し指で弄ぶ友人はそう告げた。白衣から伸びた綺麗な足はパンツスーツで覆い隠されてもなお、綺麗だった。もう、子供のままじゃいられないみたい。あの頃は目が焼けるほどにさらけ出していた白い白い脚を隠して、彼女は大人になっていた。
11:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:32:38.42 ID:aRwz879jo
花陽「――ちゃん、凛ちゃーん!」
は、とさ迷っていた思考が海へ引き戻される。赤い水平線の向こうから押し寄せる波がわたしの足を濡らしていた。ぶんぶん、といった擬音が似合うほど手を振る友達は、いつの間にかわたしと随分離れた場所から手を振る。小さな岩場だろうか。海岸沿いの道路からも少し離れた、そのてっぺんに登っていた。
よくもまあそんな所に、と見てみれば履いていたミュールを脱ぎ捨てて。かよちんは裸足で手を振る。
12:名無しNIPPER
2021/07/07(水) 06:34:31.22 ID:aRwz879jo
ひとまずここまで。
書き溜めはない。
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