結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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720: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/08(土) 11:19:20.99 ID:Q+V+Oj11o


S9.総力戦


 一方通行は独房のある地下の通路をざっと観察する。
 前方にいるのは熊のような大男。筋肉質な長身の女。武装をしたいかにもな下っ端と思われる男三人。その後ろに倒れている有象無象。
 そして、傷だらけの姿で倒れていて、そんな状態でもこちらへ視線を向けてきている少女、結標淡希。
 通路の左右の壁を見る。そこには等間隔で独房に繋がっていると思われる鋼鉄の扉が取り付けられているが、その他に金属矢や蛍光灯が突き刺さっていた。
 このことから、この少女は相当暴れたのだろう、と推測できる。自分の身も顧みず。

 床に突っ伏した少女が震える声で問いかける。


結標「……な、なんでよ」

一方通行「あン?」

結標「何で貴方が、こんなところにいるのよ……?」

一方通行「オマエとの約束を果たすためだ」

結標「やく、そく?」

一方通行「ああ」


 少年は目を逸らすことなくただ一点を、結標淡希を見つめて、



一方通行「――『結標淡希』。オマエと、オマエの周りにある世界、全部俺が守る。その約束を果たしに来た」



 そう。これが彼をここまで動かしたその原動力。
 ただの口約束だ。別に契約書を交わしたわけでもない。何の効力もない言葉だ。
 だが、彼にとってはそれだけで十分だった。十分過ぎた。


結標「……なに、言ってん、のよ。そんな約束、私はした覚えなんてない、わ。」


 一方通行の言葉を聞いた結標が顔を伏せながら、


結標「その約束は、たぶん、私が記憶を失っているときの、もう一人の『私』とした、約束のはずよ。それは、貴方もわかっているはず……」

一方通行「…………」

結標「だから、今の私とは、なんら関係ないこと。なのに、なんで貴方は……、そんな決して果たすことのできない、約束を果たしに、こんな場所へ来たのよ?」


 彼女の言う通りだ。
 この約束は彼女が記憶喪失をしているときに、一方通行との間に交わされたものだ。それは紛れもない事実。
 今の結標淡希はそのときの『結標淡希』ではない。それも事実だ。
 しかし、一方通行は揺るがなかった。


一方通行「果たせない約束だァ? 何言ってンだオマエ」

結標「え……」

一方通行「俺は言ったはずだ。結標淡希を守るってよォ」

結標「だ、だから、それは、もう一人の『私』で――」

一方通行「関係あるかよッ!」


 結標の言葉をバッサリと切り捨てる。





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