結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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686: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/12/26(日) 00:48:32.89 ID:Ud1c3PHRo
 
 
 研究価値を見出したということは、今もなお自分のデータを収集して分析をしている機関が存在しているはずだ。
 そういうところは能力についてだけではなく、その使用者のパーソナルデータも用意周到に集めている。
 つまり、『仲間』たちの消息というパーソナルデータを持っている研究機関がどこかにあるかもしれない。
 
 思いつくのは、過去自分を研究していた研究施設の数々。
 全部で八九箇所。当時の名前や場所、全て明確に覚えていた。
 二年以上前の情報なので、今となっては閉鎖されていたりと状況が変わっているかもしれない。
 しかし、施設が潰れたからと言って研究しようとする意思まで潰れるわけではない。
 施設が新設されたり、潰れようのない大きな施設へ吸収合併されたり。
 必ず、どこかにその意思は生きているはずだ。
 その研究機関たちはレベル5になった自分のことを、今もなお研究し続けているだろう。
 この記憶を使ってヤツらを追えば、もしかしたら仲間たちの情報を見つけ出すことができるかもしれない。
 確証はない。けど、やってみる価値はある。
 
 おそらく、これを実行することによっていろいろなものを敵に回すことになる。
 警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)といった治安組織。そして学園都市上層部が抱えている暗部組織という闇。
 生半可なチカラではあっさりと捻り潰されてしまうだろう。
 しかし、
 
 
 『――私だって座標移動(ムーブポイント)だ。やってやれないことはないわ』。
 
 
 部屋に置いてある棚の引き出しを開く。そこには金属矢が大量に収められていた。
 普段はかさばるからと持ち運ばずに、現地にある物を武器として使用していたため、使わずじまいになっていた物。
 しかし、今はそんなこだわりを持つべきではない。これから自分にどんな困難が立ちふさがるのかわからないのだから。
 それを大雑把につかみ取り、服のポケットに入れる。ふと、棚の上に写真立てが倒れていることに気付く。
 手に取り見てみると、そこには自分と仲間である少年少女たちが写った写真が入っていた。
 自分から見れば最後に会ったのは数時間前とかそんなものだ。しかし、それを見るとなぜだか懐かしさのようなものを感じた。
 
 さて、まずはどこへ向かおうか。部屋の玄関に向かいながら考える。
 ここから近くに大きめの研究施設が建っていたはずだ。携帯端末の地図アプリを起動する。
 もう覚悟は決めた。玄関のドアを開ける。
 
 
 これは結標淡希の二四時間前の記憶。
 このあと彼女は様々な困難を乗り越えて、『仲間』たちの情報を手に入れることができた。
 『仲間』たちの居場所。『仲間』たちの状況。そして、『仲間』たちを救い出す方法。
 
 そして、六時間後。
 
 学園都市のとある場所で。あらゆる者の思惑が交錯する場所で。
 極めて短くて、限りなく長い『一五分間』という時が流れる。


――――――





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