520: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2021/11/28(日) 00:18:27.24 ID:MJMUKdI8o
初老「お、お前は結標淡希……!」
男からその少女の名前が呼ばれる。
彼の反応はその少女のことを知っているようなものだった。
初老「なぜお前がここにいる!?」
結標「ここにある研究データ、全部私にいただけないかしら?」
結標はメモリースティックを研究員に投げた。研究員は反射的にそれを受け取ってしまう。
初老「馬鹿なッ!! そんなことができるわけないだろう!!」
結標「別にデータを奪おうなんて思っているわけではないわよ? ただコピーしてそれに入れて欲しいと言っているだけ」
初老「データが流出するという意味では同じことだろう!! お前にやるデータなどない!! 帰れ!!」
結標「ふーん」
鬼のような形相で怒鳴る男を前にしても結標は不敵な笑みを崩さなかった。
ふぅ、というため息を一度付き、床に指を指す。
結標「貴方が協力しないというなら、貴方にもこの人のような目に合ってもらうってことなんだけど」
初老「ッ!?」
初老の研究員が少女の指した指の先に目を向ける。
そこには先ほどこの部屋を出たはずだった若い研究員のようなものが、いつの間にか転がっていた。
ようなもの、と形容したのはなぜか。
転がっている男の体の至るところに、研究で使うメスやハサミなどの器具、事務で使うボールペンや定規などが突き刺さっていて、剣山のようになっていたからだ。
結標「お分かり?」
初老「……殺したのか?」
結標「いいえ、生きてはいるわ。気絶はしているけど。だけど、このまま放置していたらいずれ死ぬでしょうね」
クスッ、と笑ったあと結標は続ける。
結標「データを渡したあとこの人を病院に担ぎ込んで二人とも生き残るか、データを渡さずに二人仲良くピンクッションになるか」
研究員は後ずさりしながら机の裏に手を入れる。この裏には緊急事態時に押すボタンがある。
これを押すことで自動的にアンチスキルへ通報され、駆けつけてくるという仕組みだ。
だが、そのボタンは押されることはなかった。
初老「ごっ、がああああああああああああああああああああああッ!?」
ドスリ、という音とともに男の手の平から甲にかけて金属矢が突き刺さったからだ。
あまりの痛さに床でのたうち回る研究員。それを見下ろしながら結標は再び喋り始める。
結標「――どっちの人生が貴方にとってお好みかしら?」
――――――
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