9:名無しNIPPER[sage saga]
2021/06/23(水) 23:16:04.49 ID:SDd2HCINO
「……ギギ」
ハサウェイが私の耳元で囁く。
こんな状況なのにはっきり聞こえた。
私は彼の落ち着いた声に耳を澄ませた。
「もしかして、漏らした?」
絶句。私は聞こえないふりをした。
何かの間違いだろうと、そう思った。
だってこの状況で、なに? 漏らしたって。
「正直に答えてくれ」
いいから、仲間の心配でもしてなさいよ。
その話題以外なら、なんでも聞き惚れる自信がある。どんな些細なことでも恋に落ちる。
たとえば大丈夫だよって、安心させるとか。
「大丈夫だよ」
言われて、トクンと胸がときめいた。
ときめくなんて、久しく忘れていた感情だ。
清廉潔白でない私にはその資格がないのに。
でも、それでも。たしかに今、ときめいた。
「安心していいよ」
そう言われて、終わったのだと思った。
怖いことは終わって、だから彼は私に優しくしてくれるのだと。しかし、見誤っていた。
「僕も漏らしたから」
「お?」
はぁ〜もぅ。これだからテロリストは嫌よ。
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