19:名無しNIPPER[saga]
2021/05/16(日) 20:28:48.76 ID:emsexCaj0
タキオンは、元気になれば、また元のトレーナーに戻るだろうと思った。
だから、すぐに治療方法を探しに行った方が良い。
だが、タキオンの頭の中の理性が、今のトレーナーの姿を見てから、
絶対に間に合わないと、ずっと言っていた。今を逃したら、もう会えなくなると叫んでいた。
トレーナーは、タキオンを、縋るように見上げた。涙が汗と混じって、ひとすじ零れた。
心臓が酷く軋んで痛みを発していた。
なんだろう。
トレーナーが、タキオンを見て、聞き取れないくらいの、か細い声を発した。
なんだろう、これは。
タキオンは、長い間黙った。
そして、時間をかけて、
静かに、膝をついて、トレーナーの手をとった。
「…約束する。レースに出て、一着をとる。だから、君にも見てて欲しいな」
その言葉を聞いて、トレーナーの目から恐怖が揺らぎ、そして、ほっと息を吐いた。
タキオンは、そのまま、手を強く握る。
すると、トレーナーは、目を細めて、安心するように笑って、弱弱しく、握り返してきた。
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