【シャニマス 】果穂(16)「普通って、なんですか?」
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54:名無しNIPPER
2021/05/22(土) 17:17:11.49 ID:WLbdB1fd0
 だから、ごめん。

 たぶん最後は、そう言っていた。大きな花火が打ち上がって、少し遅れて音が爆発する。その爆発と一緒に、プロデューサーさんの声は一瞬途切れてしまったけど、それでもあたしにだけははっきり聞こえた気がした。

 ああそうか。

 花火がまた上がる。心臓を揺らすような音が体に響いて、その一瞬だけは自分が世界から切り離される。

 あたしも元から、特別だったんだ。

 夜空に広がる花火はコンサートの演出のようで、これを作っている人は、今日のために何日もかけて準備したのだろうな、と思った。

 文化祭でライブをする人だって、学校の中ではほんの一握りで、あたし以外の出演者の人だって特別だ。あたしはたまたまその中でもアイドルだってだけで、それは相対的に特別だってことにすぎない。もしその日のライブにプロのロックバンドが参加したら、あたしはその人たちに比べて普通になる。

 眼下に並ぶ屋台の人だって、誰がどんな経緯で屋台をやっているのかさっぱりわからない。あたしとは遠い人生の人たちで、あたしからすれば特別な人たちだ。

 何が普通なんて、あたしにはわからない。その場その場で、たまたまその時だけ特別になるかもしれない。
 それを言うならば、

「プロデューサーさんも、特別ですよ。あたしの中で」

 この人だって特別だ。
 父でも兄でもないのに一緒にいるし、でもあたしのことはある意味誰よりもわかってくれてる。感謝もしてるけど、なんだかこそばゆい。素直になりたくない。
 こんなことはっきり聞かれるのは恥ずかしいから、花火が邪魔してくれてる時に、こそっと口にした。プロデューサーさんは「そうか」とだけ答えた。
 花火が途切れる。

「あたしはプロデューサーさんの中で、特別になれてますか?」

 今度は聞こえるように、プロデューサーさんの方を見て尋ねる。

「ああ、もちろん」

 目が合う。逸らさない。

「じゃあ、良かったです」



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