【シャニマス 】果穂(16)「普通って、なんですか?」
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53:名無しNIPPER
2021/05/22(土) 17:16:19.54 ID:WLbdB1fd0
 普通を楽しんでいる友達を見ると、たまに羨ましくなる。放課後にどこに行ったとか、部活の先輩がウザいとか、夜遅くまで通話したりとか。
 もちろん、普通の人たちからすれば、あたしがしている経験は羨ましいものなのかもしれない。特別なことは普通味わえないことで、特別な体験をさせてもらいながら普通
も望むなんて、とんだ我が儘だってことはわかっている。
 でも、やっぱり、あたしが普通でなくなるきっかけになった人に、普通のみんなみたいに、と言われると、頭の中のつっかえが外れてしまったみたいに色々込み上げてしまって、

「ごめんな、果穂」

 浴衣の袖が涙で濡れていた。
 いつのまにか目頭が熱くなって、視界を揺らす涙を止められなくなっている。プロデューサーさんはこっちを見ないで、ごめんな、と言った。

「おれさ、果穂から普通の人生を奪ってしまっているかもって、不安に思うことがあるんだ」
「…………」

 熱い涙は夜の風で冷えて、鼻を啜ると、芝生の匂いが濃くなる。

「他のみんなもそうなけど、果穂は特に、スタートが早かったから」

 遠くから、もうすぐ花火が始まるというアナウンスが聞こえてくる。会場から拍手が響いて、より一層雑踏の音が強くなる。

「初めて声をかけた時は、正直、小学生と聞いて驚いたよ。でもやっぱり、それを含めても、おれは、果穂はあの時点で特別になれると思った」

 あの時点で、特別になれると思った。

「特別になれる人は世界でも一握りで、あの時出会えたことが嬉しくて、おれは果穂に特別になって欲しいと思った」

 プロデューサーさんの声にも熱がこもっていて、こんな声を聞いたのは久しぶりで、あたしは足元がおぼつかないような感覚で次の言葉を待った。

「でもそれはつまり、果穂から普通を奪ったのは、おれだ。だから、」



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