21:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:58:40.65 ID:S9RXO5Th0
「あなたは……どうしたいの?」
それは、頷きだけじゃ答えられない問いかけ。
彼女が、彼女自身の言葉で答えなくてはいけない質問。
私は、彼女をじっと見つめる。
促すことも急かすこともせずただじっと、彼女の答えを待つ。
数秒、あるいは数分。いいえ一瞬の間だったかもしれない。
わからない
それは声ではなかった。
口元に浮かぶ朧げな陰影から辛うじて読み取れただけの……私の想像あるいは妄想が多分に含まれている言葉。
だけど、だけど。
私には彼女がそう言ったように聞こえたのだ。
だって、この子は『あの子』なのだから。
小さく身を縮め、震える姿は、
私から目を逸らし、だけど縋るように視線を向けてくるその姿は、私の知っている『あの子』だったから。
だから、私は冷たく突き放すように事実を伝える。
「……あなたの持ち主はもう、ここじゃない所であなたの知らない『みんな』と一緒にいるわ」
彼女はどこか諦めたように頷く。
「わかってるのなら、もう一度聞くわね。……あなたはどうしたいの?」
今度こそ彼女は俯いて何も反応を示さなくなった。
その姿は紛れもなく、傷ついて摩耗しきったかつての『あの子』だった。
なら、
「……私は、あなたの事が嫌いだった」
伝えよう。
かつての私の想いを。
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