24: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:23:34.81 ID:Pb5RWNl50
琴葉に「静香ちゃん、どうだったかな」と聞かれた静香が「あっ、うっ」と狼狽えている。この流れでいくと次のターゲットは静香だろうか。
心なしかいつもよりも顔が近いように見える。静香の顔がみるみる赤く染まっていく。
その様子を見て琴葉に何かのスイッチが入ったらしい。
ごく自然な所作で静香の方に手を乗せる琴葉。静香の細い肩が再びビクッと飛び上がる。
25: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:24:05.95 ID:Pb5RWNl50
「可愛いよ、静香」
「ひんっ」
頭からポシュウと何かを吹き出しながら静香がソファにズルズルと沈んでいった。
26: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:25:06.71 ID:Pb5RWNl50
さて、そんな日常の平和を噛み締めたのも束の間。今度は志保から謎のオーラが燃え盛っていた。もう少し平穏を謳歌したいものだが、765プロというのはこういうものである。
ちなみに百合子と静香はダラリと身体を床もしくはソファに投げ出してピクリともしていない。いくつもの犠牲が積みあがった先に平和があるのだ。
「私はギャルをやります」
27: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:25:57.08 ID:Pb5RWNl50
なんかもう琴葉は「私はどうすれば良い?」とは聞かなかった。
志保が先の言葉を吐いてからすぐにクルリと背を向けてしまったせいで反応出来なかったのかもしれない。
ただ、素人である俺から見ても志保の背中は強い意志を放っていた。
志保は事務机の椅子に手をかけて一つ深呼吸をした。
28: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:26:33.61 ID:Pb5RWNl50
ドカッ、と粗雑な音を上げて志保が椅子に深く腰かけた。背もたれがギシッと軋むと同時に、志保の左足が持ち上がり、右ひざの上に組みあがった。一連の流れがあまりにもスムーズで、初めからそのポーズであったような錯覚すら覚えた。
その姿勢のまま、志保は顎で琴葉を睨みつけた。視線は琴葉に一直線に向いているのに、俺と美咲ちゃんは蛇に睨まれたような感覚に包まれた。
ただ一人、琴葉だけが怯まずにズンズンと志保の方に歩みを進めた。
29: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:27:05.78 ID:Pb5RWNl50
あぁ、これは反抗的なギャルと堅物な委員長だ。しかしハーヴェイ君のような苦労系愛され生徒会長ではない、毅然として男らしく、皆から頼られる委員長だ。
二人は言葉を交わさない。
しかし、その無音の空間すら二人に支配されていた。目線が、呼吸が、間が、二人だけの空間を作り出していく。
30: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:27:39.50 ID:Pb5RWNl50
「離せよ」
「離さない」
「うざい」
「構わない」
31: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:28:55.26 ID:Pb5RWNl50
「きゃっ」
「まったく、昔の志保はあんなに可愛かったのにな」
琴葉が勢いよく腕を引き寄せ、志保を胸中に抱きしめた。
32: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:29:32.66 ID:Pb5RWNl50
「これはみんなに隠れて付き合っている幼馴染ギャルと堅物委員長ですよ!」
名探偵美咲ちゃんの誕生だった。美咲ちゃん意外とそういうの詳しいんですね知りませんでした。
それと同時に美咲ちゃんが「わぁ〜!」と言いながらクネクネし始める。音無さんに近い動きだ。765プロ事務員の業務継承は滞りなく行われているらしい。
33: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:30:26.91 ID:Pb5RWNl50
美咲ちゃんの頭からピンク色の雲が飛び出し始めたころ、志保の「はい、ありがとうございました」という掛け声と共に琴葉は志保を解放した。
気付けば志保の表情もいつもの北沢志保に戻っていた。しかし相変わらず感情は読み取れない。
フラフラとソファに近づいていき、「ありがとう、ございました」と呟いたと思ったらそのままうつ伏せにソファに倒れ込んだ。
34: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:30:57.08 ID:Pb5RWNl50
なんてことない昼下がりの劇場の事務室。床に倒れている死体が一体、ソファで液体と化している死体が二体、心がどこかに飛んで行ってしまった美咲ちゃんが一人。
その全ての引導を、目の前の一人のイケメンが渡したのだ。
「プ、プロデューサー。ど、どうでしたでしょうか……?」
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