貴利矢「……神の命日」
1- 20
4: ◆pYYJkGKpMM[saga]
2021/03/03(水) 17:34:22.18 ID:0MCtBXwG0
 いくらあいつがクズ野郎でも、ドクターのお前にあいつを倒すことはできない――みたいなことを永夢に言った記憶がある。でも、結局のところ自分もドクターだったんだ。自分は1つの命を奪ってしまった。その事実は変えようがないし、変えようとも思わない。

 あれから時々考える事がある。あの時、あいつを殺さないで事件を解決することはできなかったのか、命が失われることが無くても良かったんじゃないのか……そんな事だ。

 あの事件があってから、自分の支援があって人の命が救われたところを見ると『良かった』『安心した』『死ななくて良かった』。心の中はそんな感情でいっぱいだったけど、隅っこの方にこういう感情がどうしても湧いて出た。

『でも自分は命を奪ったことがある』

 人に殺されるよりも、人を殺す方が大きなトラウマを持つということを初めて知った。どうしても頭の中にこびりついて離れない。隙あらばその事実を思い出させる。自分がドクターだから、なおさら。

―――――九条貴利矢。

 ……!?

 いや、ありえない。絶対にありえない。だってあいつはあの時、ライフが尽きて、自分が――

――――何を阿呆なことで悩んでいる。私はあの時ゲームを作った。そして君はそのゲームをクリアした。そのゲームのクリア条件が『私を倒す』ということだっただけだ。

 ゲームを……作った……クリアした……

――――私は誰にもクリアできないようなゲームを作ってしまったと思っていた。しかし、君があのゲームをクリアしてくれた。私は嬉しかった。私が作ったゲームをクリアしてくれて。ゲームはクリアされるためにあるのだからな。

 ……お前は、どこまでいってもゲームクリエイターなんだな。

――――当たり前だ。私は、これからもゲームクリエイターであり続ける。君たちもせいぜい私の作るゲームをクリアできるよう頑張るんだな。

 お前、まだなんか企んでるだろ……ははっ。

――――また会おう。君たちが新しいゲームをスタートするその時に…………

貴利矢「…………はっ」

 幻聴……だったのか?

 でも、幻聴と言うにはあれはあまりにもあいつだった。さっきのをあいつだと信じてみるのも、悪くないかな。

貴利矢「じゃあな、神。……いや」

 ――壇黎斗。

 そう言って自分は、今までいた場所に背を向けて歩き始めた。

貴利矢「あれ?」

 さっき置いてきたはずのガシャットが自分の懐にある。おかしいな、確かに置いてきたはず……

 多分、あいつがやったんだろう。まだ新しいゲームがあるってことか。全く、いつまで自分らに迷惑かけるつもりなんだか。

 いいぜ。どんなゲームでも、クリアしてやるよ。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
5Res/5.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice