サトシ「ママが……倒れた!?」
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7: ◆EWEMYNRbD6
2021/02/05(金) 03:50:47.74 ID:Yv8aGTuH0
しばらくして料理が運ばれてきた。


タケシ「うまいなこれ」


カスミ「はあ、ゆっくり食べるのって良いわね。普段はジムリーダーも事務とか地域振興の仕事とかあって暇じゃないのよね」


タケシ「手を抜こうと思えばいくらでも抜けるが、そういうわけにもいかんしなあ」


二人は仕事を愚痴るが、サトシはそれが少し羨ましいとすら感じてしまった。


サトシ「大変なんだな」


カスミ「サトシだって大変じゃない?色んな地方の新しいポケモンやルールに対策取るの、簡単じゃないと思うけど。旅自体も苦労するでしょ」


サトシ「まあそれはそうだけど。ポケモン好きだし、嫌になることはないぜ」


タケシ「相変わらず、根っからのポケモン好きだ。俺は旅する気力はもうあまり無いから、少しサトシが羨ましいよ」


カスミ「そうね。防衛と事務に気を取られてる私らとは何か根本的に違うわよね。私なんて家庭もあるから、旅なんてもうできないかなあ。ああ、楽しかったなああの頃は」


サトシ「いや、俺も実は不安に思うこともあってさ……」


やはりこのメンバーなら腹を割って話せる。サトシは長く自分で抱えてきた不安や将来の悩みを打ち明けた。


カスミ「正直意外だわ、そんなこと考えてるなんて。バトル中に流れ弾で死んでも気づかずポケモンへの指示を出してそうなくらい戦闘狂なのに」


サトシ「どんな例えだよ」


タケシ「でも真面目な話、そういうトレーナーは少なくない。学歴、資格、経験も無いままに大人になり、稼げずに困る人たちだ。とはいってもサトシほどの実力者なら中堅トレーナーを狙って荒稼ぎもできると思うがなあ。どうなんだそこんとこ」


サトシ「強い人とも戦いたいんだよ俺は。あとバトルは生計のためにしてるわけじゃないし。というか問題は稼ぐ額じゃなくて、何と言うか……。ママを安心させたいってのと、自分が安心したいってのがあるんだ。……働くって、二人が考えているよりもきっとすごいことなんだよ。俺は労働が怖いし、同時に憧れてもいる」


タケシ「お前本当にサトシか?随分悩んでるな」


サトシ「俺だって悩みくらいあるわ。自由を失い働くことと、社会に益を還元して誰かの役に立つこと。どちらも労働で、多くの人がしている」


カスミ「旅ばかりの実質ニートなのに自分なりの労働観はあるのね」


サトシ「もしかしたら、きちんとした息子として働きママを安心させたいのかもしれない。自分が普通の社会から逸脱していることに個人的な焦りを感じているだけなのかもしれない。ここ数年の旅は現実逃避だったのかもしれない。もう、旅は俺にとって良い思い出に過ぎないのかもしれない……」


カスミ「予想以上に深刻だわ、こりゃ」


サトシ「悪いな、変な空気にしちゃって」


タケシ「そこまで思うなら、もういっそのこと働いてみたらどうだ?もし合わなかったら途中でやめればいいさ」


サトシ「でも俺なんかを雇う会社なんてあるのか?」


タケシ「日雇いや派遣ならともかく、正社員は正直難しいだろうな。バイトをしつつ学問を修めて就職する手もあるぞ、長期的な案だけど」


カスミ「それじゃあサトシ40歳手前になっちゃうじゃない、大学出ていても厳しいと思うわよ。実力勝負でポケモンリーグに面接に行ったら?」


サトシ「むむむ……」


サトシは悩む。しかし、二人が真剣に相談に乗ってくれたことが嬉しく、思いのほか気持ちは明るかった。


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