30: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:53:22.08 ID:ewOe4rJE0
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冷気が、全身を突き抜けた。
極北の大地で鍛えぬいた肉体が、そのあまりの寒さに悲鳴をあげている。
指先の感覚がない。いや、指先だけではない。
腕も足も、瞼すら、四肢の全てが自分の意思で動かせない。
僅かにカタカタと鳴る奥歯だけが、自身がまだ生きているということを実感させてくれる。
俺は今日、新たに一つ学びを得た。
恐怖とは、酷く冷たいものなのだ。
扉の先には、一個軍団が収まりそうな広間。そして一人の王。
顔も知らぬ、その容姿すら人類には伝わっていない。だが、わかる。
奴こそ、魔王。
魔王の目は、どこか虚ろであった。
まるで、何の感慨も湧かないかのように我らを見つめている。
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