27:名無しNIPPER[saga]
2021/01/25(月) 00:43:44.51 ID:tWM2qTQ70
人類至高の時代と呼ばれた、黄金の時代。核融合のエネルギーが制御され、私たちの生活を支えていた。
だが、パニシングは、前時代に築き上げたそれらを崩壊させた。
生物の細胞を浸潤し、壊し、再び風に乗って、殺戮を繰り返す。
やがて主人を失い、戦争の幾多の爪痕が残る建造物に待つのは、風化して砂となる運命である。こうして生まれた死の砂漠が点々と地球の表面に広がりつつあるのだ。
一方で、パニシングの汚染濃度が低い場所が存在することは分かっている。
独自の磁場を持ち一年中氷点下である極点や、地表よりも低い場所である。
レイヴン隊が向かう、大渓谷もその一つである。
大渓谷では、確かに人間以外の僅かな生体も確認されている。植物であったり、鹿であったり、肉食動物であったり。それは砂漠に浮かぶオアシスのような場所であろう。
逆に、その表面的な部分しか今まで読み取れてなかったのだ。その奥ではなにかが蠢いている。
リー「このまま予定通りいけば大渓谷には、明日の夕方に到着する予定です。それから、探索を開始します。そして、如何なる事態であれ、その日
の朝には、大渓谷から脱出します。これは夜陰に紛れての脱出が最も安全だからです。機械生命体の多くが、『視覚』に頼っていることがすでに明
らかとなっています」
作戦開始から約4時間、太陽が中道にかかり、不毛な大地を燦燦と焼いている。
私たちは、木陰で小休憩と作戦確認を行っていた。
指揮官「…」
リーフ「指揮官?」
私の横に座ったリーフが、小首をかしげる。
指揮官「うん?」
リーフ「どうかされましたか?さきほどから、若干恍惚状態にありますが」
指揮官「いや、パニシングを浴びると、時々こうなるんだ」
リーフ「すぐに抑制剤を打ちます」
全身を特殊な素材の装備で覆っているとはいえ、完壁ではない。
身体に被爆したパニシングは、皮膚障害や視覚障害を引き起こしながら徐々に内部に溜まっていく。それは、ある意味爆弾だ。
長くパニシングに晒されていればいるほど、より導火線が短くなる爆弾。
40代までに死ぬ確率100%である理由は、戦闘による殉職だけではない。
パニシングによってゆっくりと寿命と能力を削られていく。
一方で私の、後継の指揮官は、遠隔指示するのが上手いらしく士官学校でトップの成績を修めているとか。つくづく時代は移り変わっている。
前線にたつ指揮官など、これからどんどん減っていくだろう。
指揮官「多分、こういうこともこれから、なくなるな。リーフ」
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