49:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/24(木) 06:26:36.47 ID:uyzFntxd0
「どういたしまして。そんじゃな、豊橋」
「う、うんっ。また、学校で」
「それはもう来年の話だけどな。よいお年を」
「あ……そっか……よいお年を」
気の早い年末の挨拶を交わしたところで、タクシーの扉は閉められる。ウィンカーを灯らせて、ヘッドライトやテールランプの煌めく夜道へ出発した。
老練な運転手さん、しっかり手入れのされた車に揺られ、プレゼントを抱えた静謐で神聖なサンタクロースは子供たちの元へと急ぐ。
――そっちの方がクリスマスのヒーローっぽいわね。
なんて呟きつつ、残された仔ブタはブラック・チェリー号に跨る。荷台は空っぽ、されど漕ぎだした足には往路と変わらない重さが伝わる。……豊橋、体重軽すぎんだろ。
「やっぱあいつ、もう少し太った方がいいよ」
怖くない三白眼でまた睨まれるから直接は言わないけど。
という言葉はせわしく駆け抜けた師走の風がさらっていった。お役御免のトナカイ(ブタ)は、ソリを引いてひとり、家路をたどる。
なんかこんな感じの歌があったような気がするな、とうろ覚えの鼻歌を小さく口ずさみながら、俺は豪勢なチキンとケーキに想いを馳せるのだった。
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