9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:00:19.55 ID:6NLLeJ5C0
「物の本によれば」と、文香は目を閉じた。今度こそ千夜は居なくなってしまったようだ。「アラビア語の、日本では《奴隷》や、《召使》と訳されている言葉は——これはジャーリヤ=Aマムルーク≠ネどというのですが——単なる無給の労働力扱いや、人としての権利を軽視されるばかりのところを、意味するのでは、なかったのです。高度な教育を受けたり、家族の一員として暮らしたり、君主にまで出世する場合もあったのだとか…… むろん、主人によっては虐げられましたし、市場で売買され、財産、所有物として考えられるなど、現代先進国の感覚からすれば、決して妥当な人権意識だとは言えませんが……
さて、女性の奴隷、ジャーリヤは、音楽や踊りの技術を備え、学芸にも通じました。千夜一夜物語で登場する、タワッドゥドという才媛は、法律、詩歌、論理、医学などの、並いる専門家に打ち勝つ程の教養を、有しています。この物語当時の感覚からいって、奴隷という言葉でこそあれ…… そう称される人々が、その主人よりも高度な教育を受けたり、豊富な知識、素養を備えていたりすることは、おかしいことでは、ありませんでした。
モルジアナもまた…… 格別に勇気と機知を持つ、分けても優秀な女傑ではありましたが…… そういう奴隷たちの、一人だったのです」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「言われた事はやるというだけのことです」
「じゃ次はスカイダイビングでも——おいおい、よせよそんな顔」
「お前こそ、もう少しプロデューサーらしくなってみては」
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