76:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 00:58:42.37 ID:tRJaplXx0
「プロデューサーさんなら、外回りに出られてますよ」
ちひろは言った。こうとなってから思い出すが、確かに昨日、そんな事を漏らしていた筈だった。すっかり忘れていた、と自分の不手際に軽い落胆を覚える。
千夜は手提げに入った二つの箱を取り出して、彼の雑然とした机に置いた。
「これ、あいつ…… プロデューサーに」
「あら、贈り物?」
緑の制服に身を包んだ事務員は楽しそうに笑った――しかしこのスーツ、明るいな。
千夜は答える。
「いえ、ただの弁償です。あ、片方は確かに贈り物ですが。文香さんからの」
今朝たまたま出くわしたところ、どちらがいいカップか対決≠ヨの緊張のあまり、神経的な痛みをさえ感じ憔悴しきってしまったらしく、文香は千夜に贈答役を押し付け、何処かへ逃げ去ってしまったのだった。
――《紅蒼付ける》と言ったよな? 《望むところだ》と?
ちとせと文香が睨み合っていた筈が、結局土俵に残ったのは千夜ひとりだった。釈然としない。
「千夜ちゃんと文香ちゃんからですね。午後には戻られますから、お伝えしておきますね」
「お願いします」
ちひろはそのまま、はたきを持ち直し、再び千夜を埃責めに処すべく、プロデューサー室のカーテンレールや資料棚を回り始めた。
くしゃみする前にここを出ようか、と思ったところへ、
「プロデューサー、今日も未読スルーだよ。飛鳥ちゃんの方もダメみたい…… あれ?」
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