169:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 02:08:12.45 ID:tRJaplXx0
「ちょっとギラギラし過ぎやしませんか。アラビアンとはこういうものなのか」
「はは、キラキラだろ。アイドルだからいいんじゃないの」
着せようとする彼の手から奪い取り、ブラウスの上に袖を通す。変に引っ掛けて痛めないよう気を遣った。真紅を彩る金の模様に、千夜はなにか気圧される思いがして、これがどうと呼ばれる形なのかは知らなかったが、何にせよ台無しにしてはと神経を擦り減らす。やっとの思いで、それぞれの袖四秒程ずつの戦いを終える。
「似合うよ。くるってしてみて」
「ばか。見るな」
彼が不満そうに背中を向けてから、軽く腕を振って、舞台中の動作をいくつか再現して、それから――見られていないことを確認して――左足を軸にターンしてみる。ふわっと浮いて、ふわっと戻る。着心地は上々で、動きづらいこともない。悪くないじゃないか、と気分良く肩を持ち上げ眺めてみると、ふと、甘く瑞々しく果実様で、ややバニラ風味の混じった香りが鼻腔をくすぐった。
これは、――そうだ、
「おい…… なんだこれ。メロンの匂いがしますよ」
「好きだろ?」
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