122:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:30:51.82 ID:tRJaplXx0
《江戸切子の、菊繋ぎ紋です》。文香は言った。長寿を祈る紋様です、と。
千夜はそのガラス細工の蒼さと麗しさに、彼女を想った。彼女の瞳を、舞台でドレスやコスチュームを装った姿を、とりもなおさず、この容器に自分を思い出せ、というようなメッセージを。
だが翻って文香は、これは彼の色なのだと言った。幾星霜振りの晴天のような、星々が連なる河のような、そういう彼の色なのだと。だから贈るのだ、と。ガラスではあの騒がしい事務所で何日ともたないかもしれませんよ、ホットコーヒーを飲むものを探しに来たと思うのですが、あまり高価そうな、というより実際高価な、ものはかえって気づまりさせるかも――千夜が善意から与えた幾つかの忠告は、文香のそういう決意の前で、全て闇夜の鉄砲となったようだ。
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