6:名無しNIPPER[saga]
2020/11/30(月) 23:55:08.21 ID:66GqGXz40
男「誰か」
男「誰かいませんか」
時折立ち止まっては声を張り上げて、耳を澄ませる。
「-----!!」
前方で、金属製の食器をすり合わせるような耳障りな音がした。
男が恐る恐る近づくと、それが巨大な口に生えた犬歯が擦れる音だと判明した。
全長5mほどもある巨大な3頭犬が、一匹の白鳥を前足で抑えていた。それまで白鳥が逃れようと暴れたのだろうか、周囲には朱が混ざった白い羽毛が一面に広がっていた。
生態系の掟といえばそれまでだが、凄惨な光景に思わず息をのむ。
反撃の手段を摘むために3頭犬は、白鳥の右翼をその巨大な犬歯で挟む。
その一瞬後、白鳥の片翼がぶちぶちと一本ずつ神経と筋肉が引き千切られた。
悲痛な鳴き声が辺りに一瞬響いて、恐ろしいほど静かになった。
男はそれからの白鳥の変化に息を飲んだ。
片翼をもがれた白鳥が人の形をなしていく。美しい純白の羽毛は銀灰色の長髪へ、黄色の嘴は薄桃色の唇へ、だがその背中から生えた翼は片方だけだった。もがれた翼が再生する様子はない。歪な、変化だと男は思った。
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