ライラ「アイスクリームはスキですか」
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42:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:34:24.98 ID:FQVp12gN0

     * * * * *


「失礼しますですよー」
「……ん、あれ? 帰らなかったの?」
 同日夜。レッスンを終え、しばらくみんなで雑談をして過ごしていたライラ。解散となって再び、事務所へ戻ってきた。
 スタッフも既に退勤している人が多く、やや広めの部屋はどこか物静かで。そこに一人、黙々と作業を続けていたのが誰あろう、彼女のプロデューサーである。
「はい。プロデューサー殿がまだいらっしゃるかなと思いまして。お疲れ様でございますよー」
 ご相談の続きができたら……と、覗き込むようにしてプロデューサーの様子を伺う。
「少し、整頓できた感じかな」
「はいです」
 机周りを少し片付けつつ、隣席を促すプロデューサー。様子を伺いつつ、ライラがそっと腰を下ろした。いざ彼とこうして向かい合うと、ヘレンと話したことが思い起こされて少し気恥ずかしくなる。
「……えへへ」
「?」
 なんでもないですよと一言挟み、本題に入る。
「古い歌を、ご披露できましたらと思いまして」


     * * * * * 


「……拝承しました、ってさ」
 隣で首を傾げるライラに「OKってことだよ」と補足するプロデューサー。相変わらずあの人は難しい日本語を知ってるね、と首をすくめる仕草を見せた。そして二人で笑いあった。
「これでエージェントさんにも了解を取り付けたし、あとは……頑張るだけだね」
「ありがとうございますですよ」
 改めて、丁寧な一礼。こういうことを今なお疎かにしないのがライラらしいところ。どういたしまして、という彼の言葉に顔を起こし、ほっと一息。
 今度のライブのこと。それに向けて準備していること。そして、そのために協力してほしいこと。説明のためにもエージェントと話す機会を持とうと早速連絡をしたら、そのまま通信を介してのやり取りになった。
「このまま済ませてしまいましょう。当該のライブも近いと伺っております。時間を取って話すことも本来は大事ですが、それよりもプロデューサー様はライラ様のそばにいてあげてください。そして、彼女の習熟度や練度を少しでも高めることに努めて頂けたら、と」
 ここにきてライブへの傾注を促す言葉が返ってきた。無論望ましいことだが、急にどうしたのだろう、と訝しむ気持ちもなくはない。とはいえ協力的な姿勢は助かるところでもあるので、端的に、そして真摯に、意向と用件を伝えるプロデューサー。その様子を隣で少し不安げに見ているライラだったが、「大丈夫」という彼の言葉がまた、彼女を少し落ち着かせてくれた。
 エージェントは提案に対して二、三の確認こそすれ、異を唱えることはなかった。
「では、ライブまでの日々含め、どうぞよろしくお願い致します」
 挨拶を交わし、通信を切る。多少は釘を刺されたりするかと予想していたプロデューサーだったが、そうはならなかったことにひとまず安堵した。大きく息を吐く。
「コーヒー、要りますですか?」
 席を立ち給湯室へ向かおうとするライラ。
「ありがとう、でも大丈夫。それにもう時間も遅いし、そろそろ帰る支度をしよう」
「あ、でも……」
「話の続きは帰りながら、ね」
 あまり遅くなるとメイドさんも心配するだろうし。そう言われ、ライラも了解した。



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