【オリジナル】『トリック・or・トリートめんつ!』
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7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:14:52.40 ID:cSMt8Cht0

 休日、時刻は昼下がり。店内にはそこそこ人がいるようだ。

 入り口から見えるラックの前で雑誌を吟味する同い年くらいの小太りの男がいて、その後ろをドリンクと漫画を持った若い男が通っていく。二つ並びになっている受付カウンターに視線を移せば、黒縁の地味な眼鏡をかけた女の子がこれから入店の手続きをしようとしているところだった。

以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:15:52.88 ID:cSMt8Cht0

 季節は秋の終わりと冬の初めの狭間。身を切る風はもうとっくに冷たい。ティーカップを手にして、ウーロン茶のパックを入れて、ホットドリンクの筐体のお湯ボタンを押しこむ。ヴィーン、なんて大仰な音を立てながら、お湯がカップへゆっくり注がれていく。

 手持ち無沙汰になり、辺りをなんとなく見回す。

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:17:20.16 ID:cSMt8Cht0

 そうこうしているうちにカップにお湯が満たされる。火傷しないよう慎重に取っ手を持って、俺も自分のブースへと向かう。

 途中、本棚の陰から出てきた人とぶつかりかけた。雑誌を吟味していた小太りの男だった。すいません、と軽く頭を下げると、いやこちらこそ、と小さく手を振られた。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:18:12.68 ID:cSMt8Cht0

 ポケットからスマホを取り出して、呟きアプリを起動させる。それと同時に通知を受け取った。あいつからのメッセージだった。

『ウチのパソコンおんぼろだからネカフェに来たぜぇ!』

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:19:48.38 ID:cSMt8Cht0

 この仮想空間は六個のエリアから初期のログインエリアを選択できた。お互いに被らないよう三個のエリアを予め選択して、そのどれかに入ることになっていた。

 俺が選んだのはアオモリ、ミヤギ、イワテ。その中からミヤギにログインした。

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:22:57.71 ID:SpDo0D5BO

『待って……マジで全然見つからんのやけど……』

『アレだな……エリアが六個は流石に見つかる気がせんな……』

以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:23:50.89 ID:SpDo0D5BO

 寒いと尿意が近くなるのは人間の摂理だ。我慢しすぎると膀胱炎になって大変なことになる、なんてこの前見たテレビでやっていたから、こういうのは行きたくなったらさっさと済ませるに限る。

 そうしてトイレで事を成し遂げた俺は、再び自分のブースを目指す。

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:24:34.52 ID:SpDo0D5BO

 ルールを考え直してトイレも済ませて心機一転! ……とは思っていたけれど、エリアを三つに限定しても、やっぱりお互いを探すのは大変だった。

 相手からのヒントを聞いて、それっぽい人に合言葉を話しかけても、全部が人違い。間違えて知らない人に話しかけてしまったことに恥ずかしい思いがないでもないけど、みんな「変な挨拶だね」と笑って、好意的な返事をくれるのが救いだった。

以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:25:54.50 ID:SpDo0D5BO

 そうして遊んでいるうちに一時間半が経っていた。まだまだあいつは見つかりそうにない。俺はフッと軽く息を吐き出して、スマホにメッセージを打ち込む。

『おなかへった。ちょっと休憩しよ』

以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:26:58.37 ID:SpDo0D5BO

『やっべぇ、近くからすごいお腹の音聞こえた笑』

 えっ、と思った。まさかな、とも思った。それから少し悩んで、メッセージを返した。

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2020/10/31(土) 11:27:57.52 ID:SpDo0D5BO

 下らない言葉を交わし合う。そうしていると、コンコン、と扉がノックされた。はい、と返事をしてブースを開けば、店員さんとカツカレー。

「お待たせしました、カツカレーです。ご注文は以上で?」という言葉に頷いて、トレーを受け取る。

以下略 AAS



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