20: ◆gxyGj7UNSanm
2020/10/30(金) 02:29:04.97 ID:dk3wt1/f0
さて参った。
一回りぐらい離れた少女たちのわがままやら、同僚の小言やら。
小鳥さんの頭おかしな独り言なんかには大概慣れたつもりではあったが、こんなことはついぞなかったような気もする。
―――プロデューサーは嘘つきですぅ。
いや、あったかもしれない。許せ。
が、慣れるわけがないのだ。
前世でどんな宿業があったら、こんなことになるのか。
美少女が、自分の裾をつかんでる。
しかも泣いている。
俺のせいなのか。俺のせいなのか?
いったい何があった。
誰か助けろ。俺を。
具体的には青羽さん。
あるいは自主練しに来たアイドルでもいいぞ。
―――自分でなんとかしてください。
知ってた。
「なあ百合子……」
「…………」
袖を引っ張る力が強くなった。
先ほど見えた赤い目―――どう見ても泣きはらした目は、膝に隠れて見えない。
「……何かあったか?」
「……何も、ないんです」
ぽつり、と喋った声はどこかぐずついている。
彼女は、まだ、泣いている。
「何も。何も。なかったんです。なかったことになっちゃった。
私が、私と、皆と、が、頑張ってきたものが。
私の、思い出が。
ううん、私の思い、そのもの、が、なくなっちゃったんです……」
「……」
整合性がとれない言葉。
断片的な単語から、意味をくみ取ろうとする。
「夢でも見たのか?」
「……そんなこと、言わないでください」
話がかみ合わない。
「夢なんてものに、しないでください……!」
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