35: ◆eodXldT6W6[saga]
2020/09/29(火) 00:02:32.36 ID:bZV+O8ybO
後日、東京で起きた同時多発テロ事件の渦中に見覚えのある移動販売車があることを知った果穂は、プロデューサーやユニットのメンバー、社長、事務員のはづきにまで必死になって訴えた。あの車に乗っていたのは刑事で、自分はその二人に助けられたと。
果穂「伊吹さんも志摩さんも、ほんとうにすごい警察官なんです! ぜったいにこんなことはしません!」
果穂の訴えを真剣に聴きつつ、事務所は判断を留保した。いちアイドルが社会的にデリケートな状況に対して意見を表明するのは、ファンあるいはファンでない人間に許容される行動なのか。
果穂「あたし、助けたいんです……本当のことを知ってるのに、黙ったままでいたら、もうヒーローを目指すことはできません……!」
しばしのあいだプロデューサーは動かず思案しているかのように沈黙する。長いとも短いともとれないほどの時間が経過し、プロデューサーは果穂と目を合わせ、口を開く。
プロデューサー「事務所の責任で果穂の話を発表できるよう社長に相談してみる。果穂はくわしい内容を文章で書いてくれ」
SNSに投稿された果穂の意見は驚くべき勢いで拡散される。はじめは困惑、戸惑い、反対意見も出てくる。だが、メロンパンの車に乗っていた刑事に助けられたという果穂と同様の内容の意見が投稿され出したのを機に、風向きは一変する。結局テロそのものがフェイクであったことも判明し、果穂の行動はきわめて高いリテラシーに則ったものとして称賛される。
事務所の人間はみな安心し、ひと息ついた様子だ。
しかし、果穂だけはあのメロンパンの車に乗っていた伊吹と志摩がいまどうしているのか気がかりな気持ちがどうしても拭えなかった。
果穂は信じるしかない。
最悪の事態と最後の手段、そのどちらからもあの二人なら大丈夫だろうと。
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