小宮果穂「ドーナツのクズ、メロンパンの車」
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18: ◆eodXldT6W6[saga]
2020/09/28(月) 23:45:54.07 ID:7MqFVx3xO

 信号がメロンパンのような緑色に変わった。志摩がアクセルを踏み込み、まるごとメロンパン号を発車させる。メロンパンの移動販売車に偽装した張込み用の覆面車は法定速度でゆっくり進み、緑と白黒で塗り分けられた車体に追い越していく自動車を反射させている。

 志摩と伊吹は機動捜査隊に所属していた。彼らの役目は事件が発生した場合いち早く現場に駆けつけ迅速な初動捜査を行うことであり、いまは管轄区域のパトロールの最中だった。

 志摩がハンドルを握り車道を走る車に注意を向けているなか、助手席の伊吹は頬杖をついて窓の外を眺めていた。

 街は太陽の光を浴びて燦々と輝いている。帽子や日傘で日光から逃れようとしている人びと、配達に急ぐ出前太郎の自転車、猛暑のため蝉の声が聞こえない夏だった。

 メロンパン号の走行とともに見える景色も変わる。ビル街から突如、緑色に輝く木々の葉が伊吹の眼に映る。とはいえ不思議な小径を抜け森の中に入っていったわけではなく、公園に差し掛かったというだけのことだった。木々の切れ目から公園に設置された遊具を伊吹はサングラス越しに垣間見える。ブランコ、すべり台、天辺の部分だけが黄色であとは水色のペンキで塗られたジャングルジム、色分けされたジャングルジムの手前に赤い自販機があり、その横のゴミ箱の前で女の子が紙袋を握ったまま佇んでいる。




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