5:名無しNIPPER[saga]
2020/09/20(日) 13:21:39.84 ID:DMraZkfV0
青年の問いかけにモイラは頭を押さえた。頭痛がする。自分が所属している事実も忘れて彼女は「にじさんじはこんなのばかりか」と嘆いた。
話が早い、どころではない。
「……ぶっちゃけ、そうです」
吐き出すように、告げる。その瞬間社築は吠えた。声にならぬ感情の奔流を、一匹のオスはただ音として喉から絞り出した。
女神は天を仰ぐ。端正なるその額に青筋を立てながら。
「社さん、そのアイドルのライブ会場における信者の遠吠えみたいなの止めてもらっていいですか?」
我に返った男が「年甲斐もなくはしゃいでしまった」と顔に出す羞恥の赤みはしかし、女神から嫌悪感を引き出すばかりだ。
「あ、はい。すんませんっした」
「……えー、ごほん」
一つわざとらしく咳払いをして場をリセットした彼女は女神モードを自分に言い聞かせた。
「社さんが死んでしまったのに気付いた瞬間すぐ一時停止はしたんですけど――世界の」
「世界の!? スケールでかッ!?」
「本当は死んでしまう前に私が気付ければ良かったのですが、魂が抜けた瞬間しか私には察知出来なくて……そこはごめんなさい」
「いやいやいやいや! モイラ様が謝るところじゃないっすよ、そこは!?」
「それで……私には死んでしまった人を生き返らせることも出来ないんです。正確には出来ないこともないのですが、ルール違反と言いますか。もしここで私情から社さんを生き返らせてしまったら、それは他の人にも同じようにしないと不公平だよねっていう」
女神は俯く。
「現世が蘇った死者で溢れ返ってしまいますから」
社はパタパタと手を振った。
「いや、それは……まあ、仕方ないんじゃあないですか。死因って働き過ぎでしょう? そりゃ、全面的に俺が悪いんですし」
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