【安価・コンマ】ファンタジーな異世界に異物が紛れ込むお話
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375: ◆7m3grp2dM2[saga]
2020/09/29(火) 23:37:57.56 ID:128U4Cd+o

コンコン

と、扉をノックし声をかける。

「おはようございます、お嬢様」

そうすると、扉越しからパタパタと軽い足音が聞こえ、扉が内から開かれる。

「お、おはよう。エルクラッド」

少し息を乱し、寝間着姿のままのお嬢様に出迎えられる。
取り繕うような笑顔を見せているが、櫛も通っていないぼさぼさの髪の毛から先ほど起きたばかりなのは一目瞭然だ。

「また随分と夜更かししていたようですね」
「えっ、えっと……ちょ、ちょっとだけだよ?」
「ここ数日厨房のハムの減りが早いと、コックのトールが嘆いておりましたよ」
「な、なんのことかなー?」
「引きこもって食べてばかりいると、あのような姿になりますよ」

そう言ってオレは階段の手すりにでっぷりと体をもたれ掛からせ、今にも落ちてしまいそうなネズミ捕りの姿を指さす。
お嬢様は顔を青くし、ペタペタとお腹をさすっている。

あんな騒動がつい数日前に会ったばかりだというのに、お嬢様はそんな事を引きずらない能天気さだ。
確かに、エレノア様から見れば心配なさるのも無理が無いかもしれない。

……だけど、オレにとってお嬢様のその姿こそが何よりの救いだ。
この人に仕えている間だけは、オレは『人間』で居られるのだから。

「さあ、早く着替えて来てください。朝食を用意してお待ちしています」

恭しく礼をし、オレは下階へと降りていく。
それは、何の代わり映えのしない、当たり前の日常だった。



『日常へと帰る』godEND



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