高垣楓「あなたがいない」
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73: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:30:59.04 ID:+7YhSCXJ0

「……いろいろ、大変でしたね。今、おつらくないですか?」

 場面は診察室に戻る。私の前にいる先生は、人の好さそうなおじいちゃん先生だった。

「いえ、特には」
「そうですか。高垣さんとご一緒に来られた方にも、お話は伺っています。ですが、高垣さんからいろいろお聞かせ願えれば、私は嬉しいです」

 おじいちゃん先生は優しく説くように、私に話しかける。そう言われても、私はなにを話していいのか分からない。

「そうですねえ。それじゃあ、女性に尋ねるのは申し訳ないですけれど……去年と比べて、体重はどのくらい落ちましたか?」
「体重、ですか?」
「はい。体重、です」

 体重と訊かれると、さすがに正直に答えないわけにいかない。先ほど看護師さんから質問を受ける前に、身長や体重を量ったのだ。

「ええと……だいたい六キロ、です」
「六キロですか」
「はい」

 六キロ、つまり今の私の体重は四十三キロ。この身長で四十キロ台前半は、あまりよろしくない。




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