67: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/19(土) 15:26:25.35 ID:+7YhSCXJ0
午後。
ちひろさんは私の看病に付いてくれていた。
あまり食欲はないけれどこれではいけない、と彼女とブランチをともにする。誰かとこうしてプライベートに食事をするなんて、いつぶりだろう。
いやいつぶりというほど久々というわけじゃない。仕事のお付き合いとか、仲間のアイドルたちに誘われたりとか、一緒に食事に行くことはよくあった。
でも、その印象を私は覚えていない。
冷たい女なのかな、などとつまらない考えが過ぎる。
「ほら、楓さん」
「え?」
「考え事、ダメですよ?」
ちひろさんに指摘される。せっかく事務所の仕事を放ってまで来てくれているのだ、彼女との食事に集中しよう。
そうは言っても食べられる量は多くなく、ちひろさんは一瞬困ったような顔をした。しかし彼女はすぐに笑顔を取り戻し、私に。
「さあ、それじゃあ病院に行きましょうか」
と告げた。
タクシーでちひろさんと移動する。案内された先は、ビルの中にある一室だった。
「ここ、は」
「私も通っているんです。さ、行きましょう?」
入口にある看板に書いてあったもの、それは。
『メンタルクリニック』
の文字だった。
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