高垣楓「あなたがいない」
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38: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/14(月) 21:17:13.10 ID:Od9IjqsH0

 わがままだということは十分分かっている。だがどうしてもこれだけは、譲れない。
 社長さんは手帳をテーブルに置くと、両手を組んで私に言った。

「高垣さんの想いは分かりました。ただ、それでもセルフでというのは、承諾できません」
「……」
「チームを組みましょう。そのリーダーは、高垣さん、あなたで」
「……えっ」
「私たちが高垣さんをバックアップします。彼の想いを実現できるよう、頑張りましょう」

 私は、なにを言われたのか一瞬、分からなかった。今も少し、混乱している。

「マネジメントと営業のスタッフの人選は任せてもらいます。それと、先ほどのプロデューサーは、アドバイザーとして参加させます」
「……」
「では、詳細は後日、詰めていきましょう」
「……あ、はい」

 なにかがあっけなく決まっていく。拍子抜けするほどに。でも、これで。
 Pさんに、報いることができる。
 私は、彼ではない。だから彼のようにできるとは思わない。
 それでも、彼の意志を継ぐということが私にとって、なにより重要なことなのだ。
 こうして私は、困難な道を進むことを決めた。それがどういう結果をもたらすか、分からないのだけれど。
 それでも、私は幸せだった。




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