高垣楓「あなたがいない」
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191: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:33:21.28 ID:17bnaLyc0

 私たちの親は、いわゆる『毒親』だったんです。
 私の実の父と私の母が離婚して、ほどなく再婚しました。実はその時にはすでに、母のお腹には弟がいました。
 そう、母は浮気相手と再婚したんです。

 あの男は、ひどい男でした。母に暴力をふるう、借金もする。
 父親と呼ぶことも憚られる、私にとっては害虫でした。そんなところに弟が生まれて、弟はかわいそうでした。
 あの男、いや『虫』ですね、虫はいつだって家にいない。母がひとりで私と弟を育てる、そういう環境です。
 でも母は生活するために働かないとならない。いつしか母は、弟を私に任せ自分で育てることをやめました。

 虫は普段、母のところには戻らず、他の女のところを転々とするような奴だったと聞いています。
 時たま帰ってきては家のお金を持っていく。
 母も苦労していたと思いますけど、それを私は哀れだと思いません。だって、私や弟に暴力をふるい怪我をさせても、なにひとつ庇おうとしないんですから。

 そして私が中学の頃です。
 虫に襲われそうになりました。恐ろしくて、私は何度も母に「逃げよう!」って、訴えました。
 でも母は動こうとしない。学校の先生にも訴えて、そこから児童相談所へ連絡が行って。
 どうにか、私たちは虫から逃げることができました。そして所縁のない町で新しい生活を始めたんです。

 しばらくは穏やかな生活でした。母もこの時は、優しかったような気が、します。
 高校を卒業して私は東京で就職することになり、家を出ました。
 それが、間違いでした。
 就職して彼氏ができて、私自身が幸せだなと思っていた時、虫から電話があったんです。
 あいつを、どこへやった、と。
 虫から電話があって私は、あまりに恐ろしくてすぐ切りました。
 そして、住んでいたアパートから彼の部屋へ引っ越して、電話番号も変えて、一日おびえる日々でした。
 その後、虫から連絡が来ることはなく、私は彼と結婚して、今に至ります。




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