高垣楓「あなたがいない」
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164: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:32:28.29 ID:itU6iUE10

 公式にメッセージを配信してしばらく経った。まだ仕事は再開して、いない。

「カウンセリングを受けてみたら、どうかしら」

 近くのカフェで一緒にお茶をしている時、瑞樹さんが言った。

「カウンセリング?」
「自分ひとりだと苦しいことでも、話を聞いてもらうことで整理できたりするし、いいと思うの」
「……はあ」

 瑞樹さんはあの事故のことがあって、いろいろ気にかけてくれる。それはありがたい事だけれど。
 私自身、カウンセリングを受けてみようかという気にならない。
 むしろ、早くに仕事を再開したいという思いでいっぱいで、そんなところまで気が回る余裕はなかった。

「でもあまり、気が進まないですね」

 私がそう答えると、瑞樹さんは。

「合う合わないもあるし、エステに行くような気持ちで、一度くらい行ってみたら?」

 などと気安く言うのだった。
 それは彼女なりの優しさだと、もちろん私は知っている。無碍にするのも申し訳ないので、調べてみようかしら。
 事務所に戻り、プロデューサーを訪ねてみた。
 彼はすでに次の現場に出かけていていない。というか、スタッフのほとんどが出払っていた。

「今日はちょっと忙しいみたいで」

 ちひろさんがぽつんと、留守番をしている。私はちひろさんの隣、出かけているスタッフの椅子を無断で借りた。




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