14: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 22:57:02.65 ID:kh3F9e+N0
「お姉さんに、ですか?」
「はい……弟がいろいろお世話になりました、と、お礼を言われて……」
そう言うとちひろさんは、ぽろぽろと涙をこぼす。
「私……なにもPさんに報いることしていないのに……お礼を言われるなんて、そんな……」
それ以上、言葉を紡ぐことは難しかった。そして、ちひろさんが涙を流す横で、相変わらず泣けずにいる、私。
いったい、なんなのだろう。この、私は。
「他のスタッフさんにお任せして、私たちはお先に失礼しましょう。たぶん社長さんも、そうおっしゃったのでしょう?」
ちひろさんはうつむいたまま首肯する。
私はちひろさんを連れ立って、ロッカールームへ向かった。そして、ちひろさんを着替えさせる。
鼻をすする音が、ロッカールームに消えていった。
事務所の中に指示の声が響き渡る。スタッフの混乱が続く中、私とちひろさんはお先に上がることとした。
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