46: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2021/09/03(金) 18:06:09.48 ID:YbM8yKa9O
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「ぐへぇ……」
死んだ目の背広姿で歩く人々の中に俺もまた埋没するいつも通りの朝。瞳が死んだ子一等賞なら、ダントツで俺が勝てる自信がある。なんて清々しい朝でしょうか。
だがしんどさは強烈に感じるものの、不思議と昔に比べてツラさは少なく、精神的苦痛はは年を経るごとに減少傾向にある。これが慣れによる順応か。慣れって怖い。
それに、正直な話をすると自分はまだ良い方だと周りを見ていると感じる。毎日栄養ドリンクだったり魔剤だったりを体内に流し込みながら歩いている人間を見ると、『こいつらよりはまだマシか』と思える。下を見ていると人間は精神的に安定する。これマジで。実はこれは下方修正型メンタルヘルスと呼ばれ、近年精神療法界隈で注目されている学説らしい。ちなみにこれ嘘な。
そんなことをウツラウツラと頭の中で浮かべながらいつもの道を歩いている。もしも脳内の思考をそのまま文章化できるツールが出来たら、エッセイストにでもなれそうな勢いだ。――いや、ねぇな。書店の隅でホコリ被ってるのが見えるわ。
と、その時、不意の衝撃が右肩を走る。
誰だ?
肩を叩かれたのはわかる。しかしそんなフランクな接し方をしてくるような関係性の人間は、俺にはいないはずだ。
人違いかもしれないと思いながら振り返ると、想像だにしていなかった人物が、そこには立っていた。
なるほど、この人なら納得だ。
「やぁ、比企谷くん」
雪ノ下陽乃だった。
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