8: ◆eodXldT6W6[saga]
2020/09/06(日) 07:30:29.04 ID:sPru/fk9O
さっきまで果穂の心をはずませ、ウキウキさせてきたものが目の前の青年から一挙に消え去ったことが果穂には一目でわかった。
それは、果穂にとってとてもおそろしいことだった。
久住「悪い奴も所詮は人間やからな。できることなんて神さまに比べてたらたかが知れとるで。知っとる、果穂ちゃん? 教会の屋根が崩落して一〇〇人以上死んだ信者が祈ってたのも、飛行機乗っ取ってビルに突っ込んだやつらが信じとったのもおんなじ神さまなんやって。いやー、すごいわ。聖書とか人類史上もっとも過激なスプラッターやで。神さまは指先ひとつでどえらい泥水呼んで、一瞬で街も人もぜんぶ浚ろうてまう。いい人も悪い人もぜーんぶのうなってゴミばっか残って、時間がたてばそのゴミのこともみんな忘れて、なかったことになる。ほら、来年にはオリンピックやん? あー、でも神さまは理不尽やからオリンピックものうなったりしてな」
久住はまた人懐こい笑顔を見せたが、果穂がもうこの男といっしょに笑うことはできなかった。
久住「悪い奴には気ぃつけなー、果穂ちゃん」
久住は果穂に手を振りながら公園から立ち去った。出口の前まで歩いて行ったとき、ふと思い出したように手に持っていたドーナツの紙袋を自販機横のゴミで溢れたゴミ箱に捨てていった。
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